家人の姪っ子の結婚式があるというので、二人して常磐線で茨城県石岡市へ。
早めに着いたので、駅近くの商店街を歩く。近年の地方都市の例に洩れず、ここも駅前の空洞化が起こっていて、よく晴れた土曜の昼下がりというのに、人通りがまるでない。
国道六号線沿いのメインストリートには、正統的な木造の商家や手の込んだ看板建築がまだあちこちに残っているが、この懐かしい景観ははたしていつまで維持できるのだろう。どの店も繁盛しているようにはみえず、次世代が家業を受け継ぐとはとうてい思えない。このまま失われてしまうにはあまりにも惜しい街並なのだが。
式場は駅からかなり遠い距離にあり、車でしか行けない場所。近辺にはショッピング・モールやら量販店やらファミレスやらが軒を連ねていて、駅前の閑散とした光景とはまるで対照的な眺めだ。一見賑やかではあるが、あまりにもステレオタイプ化された光景にうんざり。日本国じゅうどこへいっても、無国籍的に画一化された同じ景観と出遭うのでは悲しすぎる。これが「美しい祖国ニッポン」なのかしらん。
結婚式なんて十年ぶりくらいだろうか。チャペルでの挙式のあと、大広間に八十人ほどがつどって披露宴。一昔前の大仕掛けやお涙頂戴の演出過剰はすっかり影を潜め、和気藹々としたカジュアルな雰囲気のなかで会食は進行。料理もけっこう美味しかった。
新郎新婦は中学時代のクラスメイトだそうで、新郎はその後サーフィンに魅せられ、新婦もそこに惹かれて一緒になったといい、参集した友人たちもそっち方面の連中が多かったようだ。群れているときは、ただただ騒がしいだけの無作法者集団にみえるが、指名されてマイクの前に立つと、けっこう生真面目に祝辞を述べる。愛すべき奴らといったところか。
日焼けしたファンキーな面構えの新郎クンは、長髪を肩の下まで伸ばしたままで式に臨んだので、「おお、さすがサーファーだなあ」と思っていたら、途中のお色直しでバッサリ断髪し、五分刈りの坊主頭になって再登場したのには一同あっと驚かされた。なかなかの役者である。
行き帰りの車中では、昨日「音羽館」でみつけた内藤陽介の新刊『満洲切手』(角川選書、2006)を面白く読んだ。その感想は明日ご報告しよう。