所用が思いのほか早く片付いたので、西荻窪まで足をのばす。この街には1970年代後半に二年間ほど住んだことがあるから、懐かしい場所に帰ってきたような感じが今でもほのかにする。個々の店はずいぶん入れ替わったが、街並のたたずまいはあの頃とあまり変化していないためだろう。
いつも通り、音羽館へ。お気に入りの古本屋だ。いつ行っても欲しい本に必ず出くわす、品揃えのよさが抜群の店。しかも値づけがたいそうリーズナブル。普段はクラシック音楽が流れる高尚な雰囲気なのだが、今日は珍しくシュガーベイブの「Songs」がかかっていて不意打ちを食らう。
カウンターでは店主が女性客の持ち込んだ本の査定をしている。どうやらバルトルシャイティス著作集の揃いのようで、買取価格をめぐって攻防のまっただなか。面白そうなので、本棚の後ろで立ち聞きしていたら、「もう少しなんとか…」「この金額がギリギリ、これ以上はちょっと…」となって結局は商談不成立。女性は肩を落として帰っていった。一般に古書店での買取価格はそこでの売値の半分以下(三分の一ともいう)なので、売りに来た客は「そんな金額にしかならないのか」と落胆するのが常なのだ。
物陰から顔を出して店主の広瀬さんに挨拶。六月のトークイヴェントでお世話になって以来、ちょっとご無沙汰してしまった。明日は他県へ出かける用事があるので、往還の道中で読むために面白そうな本を二冊ほど購入。
いろいろ積もる話があるからと、店主に誘われるまま近所の珈琲屋へ移動。小一時間ほどしゃべる。彼もまた無類の音楽好きなので、当ブログでも書いたザルツブルク音楽祭の話題やら、パーシー・グレインジャーのこと etc... 実は今日は彼にひとつ重要な頼み事もあったのだが、気安く快諾して下さったのでホッとした。(この件については、いずれここで話題にすることになろう)。
昨日の疲れが出たのだろう、帰りの車中ではひたすら熟睡。