以前、レコード・ジャケットを集成した『12インチのギャラリー』(美術出版社、1993)という本を出したことがある(左上参照)。自前のLPコレクションから400点を選りすぐって、ジャケット・デザインの諸相を論じたものだ。おのれの仕事を云々するのは面映いことだが、正直言ってセレクションには満足している。LP時代でもっとも優れたアートワークを一冊に結集できた、と密かに自負しているのである。
ただ一つだけ、この本で心残りがある。それは1970年代初頭にユニークな仕事を残した WORKSHOP MU!! のジャケットを一点も収録しなかったことだ。理由は単に、この本を構成する12のセクションに、それらの作品がうまく合致しなかったからなのだが、残念なことをしたものだ。せめて大瀧詠一の1st アルバム「大瀧詠一」(1972)か、細野晴臣の「Hosono House」(1973)だけでも取り上げておくべきだった。
WORKSHOP MU!! は1970年に結成されたデザイナー集団。眞鍋立彦、中山泰、奥村靫正を主力メンバーとし、はっぴいえんど、サディスティック・ミカ・バンドなど黎明期のロック・バンドのLPアルバムのデザインを担当。埼玉県狭山市の米軍払い下げ住宅に暮らし、憧れのアメリカン・ライフを満喫するとともに、本家のポップ・アートの強い影響下で、独自のノスタルジック・テイストの作風を創り上げた。
彼らの仕事については、村上龍のグラフィカルな短篇小説集『ポップアートのある部屋』(講談社、1986/講談社文庫、1989)に、多くの図版が収められていて重宝していたのだが、このほど集大成と呼ぶべき大判の画集『WORKSHOP MU!!』(主婦の友社)が出た。奥付によれば今日が発売日だ。
ヴィジュアル・ブックなので、ぜひ店頭で現物をご覧いただきたいが、これはたいそう楽しい本だ。あの時代を体験した者も、新たに発見する者も、ひとしく溜息をつくこと必定である。
当時の彼らをつぶさに知る写真家、野上眞宏さんの回想記が素晴らしい。彼の書きっぷりがそう思わせるのかもしれないが、ああ、なんて良い時代だったんだろう、とまたまた溜息。