先日から読み続けてきた面白い伝記本を読了。
Barbara Urner Johnson:
Catherine Urner and Charles Koechlin, A Musical Affaire.
Aldershot/Burlington: Ashgate, 2003.
作曲家シャルル・ケックラン(1867-1950)と、その弟子のアメリカ人女性キャサリン・アーナー(1891-1942)との秘められた恋愛関係を跡づけた興味深い本だ。
ケックランは父と娘ほど歳の違うこの才媛を深く愛したが、妻子ある身ゆえ、彼女との恋愛は注意深く秘匿された。アーナーの姪にあたる著者は、残されていた両者の往復書簡を丹念に読み解き、二人の共同作品の存在を明らかにしたうえで、二人がどのように出会い、師弟関係を超えて惹かれあったかを明らかにしていく。
ケックランとアーナーのただならぬ交遊は、やがてケックランの妻の知るところとなり、1933年ついに破局を迎える。その直後、彼は映画館で「嘆きの天使」を観て、突如として銀幕スターに惹かれだす。彼の熱狂的なまでの女優礼賛は、現実には成就できなかった恋愛の、ある種の代償行為だったのであろう。