ハイドパーク、といってもロンドンのど真ん中にある公園ではない。
正式には稲荷山公園という。埼玉県狭山市にあり、戦後は長く進駐米軍が接収してジョンソン基地としていた場所である。返還後もその周囲には「米軍ハウス」が多数残され、1970年代初頭にはロック・ミュージシャンやデザイナーらが住みついて、ペンキ塗りの一戸建、フローリング張りの洋間で憧れのアメリカン・ライフを楽しんだ。細野晴臣の「Hosono House」(1973)はまさにその時代、この地の一軒家で自宅録音された不滅の名盤である(エンジニア:吉野金次)。
70年代のポップカルチャーの揺籃の地であるこの場所で、ゆかりの仲間たちを集めて野外コンサートをやろう。当時からずっと狭山に暮らすフォーク歌手・麻田浩さんの提唱で、稲荷山公園(通称ハイドパーク)を会場として昨年九月に開催されたのが「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル(HMF)」。
麻田さんの呼びかけに応じて、小坂忠、洪栄龍、鈴木茂ら多くのミュージシャンが参加し、懐かしくも夢のような二日間の饗宴が実現をみた。最後に大トリとして細野さんが登場し、三十年以上封印してきた「Hosono House」の楽曲を披露したとき、そこに居合わせた人々は誰しも「ハイドパーク」という場の醸す霊力=ゲニウス・ロキをひしひしと感じたのだった。
あれからちょうど一年。昨年の成功に力を得て、今年も第二回「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル」が開催される。明日と明後日の二日間、場所はもちろん狭山なるハイドパーク。
参加ミュージシャンはがらりと様替わりしているが、きっと思いがけない驚きが待ちうけていることだろう。さあ、明日に備えて、今夜はぐっすり休まねば。