札幌のホテルのPCから日記を書き込んでいる。
東京駅を今朝七時半に出発し、新幹線と特急を乗り継いで札幌駅頭に降り立ったのが夕刻五時半。正味十時間という長旅だった。飛行機ならヨーロッパに着いてしまう頃合だ。
これまで札幌には仕事でも休暇でも何度となく来ているが、いつかこの地を陸路はるばる訪れてみたいと思っていた。何をまた酔狂な、と笑われるのは承知のうえだ。「北の大地」の遠さや広がりを実感するには、地面を実際に移動してみるに限る。今回はさしたる目的のない一人旅なので、急ぐ理由などあるわけがない。
実をいえば美術館時代、一度だけ陸路で千葉と札幌とを往復したことがある。美術品輸送トラックにクーリエ(作品の付き添い役)として同乗したのだ。このときは片道24時間もかかり、こんな辛い移動は二度と御免だと思ったものである。それに比べれば、今回は鉄路の旅なので、天と地ほどに違う。車窓を眺めながら駅弁を頬張り、ヘッドフォンで好きな音楽を聴きながら煙草をふかす。実にお気楽な道中だった。さすがにちょっと腰が痛くなったけれど。
札幌駅のホームには木下裕子さんが出迎えてくれた。小生をいつも応援してくれる友人である。
彼女の案内で大通公園の野外ビア・レストランへ。時間がゆっくりと流れる。乾燥した涼風が肌に心地よい。灼熱地獄の東京とはまるで別世界。なんだかロンドンのテムズ河畔にでもいるようだ。いいなあ札幌。
明日はPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)の最終日。郊外で野外コンサートがある。ワレリー・ゲルギエフははたして「ペトルーシュカ」をどう指揮するか、楽しみである。