今晩は渋谷のブルーヒートという小さな店でライヴを聴く。知る人ぞ知る女性ブルース・シンガー兼ギタリスト、ファイアー大道さんのワンマンショーだ。
小生は70年代の後半、親しかった女友だちの影響でブルースを齧った一時期があったのだが、そのあと長らくご無沙汰だった。それが昨年のこと、全くの偶然から大道さんの存在を知り、しみじみ「いいものだなあ」と、ブルースの魅力を再認識した次第。彼女のステージはこれまで五回ほど聴く機会があったが、いつも数人のセッション中心で、ソロを聴くのは今夜が初めてだ。
八時半開演のところ、少し早めに着いたので、焼きソバで腹ごしらえ。三々五々熱心な常連さんが集まってくる。やがて大道さんがエレキギターを背に颯爽と到着。今日もご自宅から自転車で来られた由。ひとしきり挨拶と雑談。向かいの席の女性二人は大道さんの職場の同僚だそうだ。
入念なチューニングのあと、いよいよソロ・ライヴが始まる。仕事場のお仲間がいるせいか、ちょっと緊張され、最初の数曲ではギター、歌唱ともに今一つ調子が出なかったが、やがて堅さがとれて、いつもの大道さんのおおらかな唄いっぷりが戻ってきた。低音から中音域にかけての彼女の声はたいそう伸びやか。暖かい人間味が滲み出て、聴いているだけで身も心も癒される。小生はこの声が好きなのだ。英語の発音も丁寧。歌詞がよく聴き取れるのが嬉しい。
今夜の曲目は以下のとおり。
1. Sweet Home Chicago
2. Bright Light Big City
3. Key to the Highway
4. Nobody's Business
5. Please Send Me Someone to Love
6. Hootchy-Kootchy Man
7. Stormy Monday
8. Five Long Years
9. Dust My Broom
(encore) Chicago Bound
(encore) Next Time You See Me
アンコールの二曲では客席にいたギタリスト氏(ブルースン・カーテン下川さん)が飛び入りで参加。こういうことが易々とできてしまうのも、ブルースならではの醍醐味である。
大道さんは40歳になってからブルースに目覚めたという遅咲きの花。ひたむきに邁進するその姿は、われら中年の希望の星だ。これからもブルースの「大道」をひた走ってほしい。