今日(24日)は昼過ぎから駒場の日本近代文学館で戦前の雑誌をみる。
1925(大正14)年の「アサヒグラフ」と「週刊朝日」をそれぞれ通覧。この年に朝日新聞社が企てた世界初のシベリア横断「訪欧大飛行」についての調査である。欠号もあるので完全ではないが、当時の取材状況があらかた判明した。
4時に文学館を退出して、そのまま徒歩で渋谷へ。円山町のユーロスペースで連続上映「Hosono Theater 細野晴臣の映画音楽堂」。今日はその初日なのだが、上映は夜9:05からなので、まだ時間がたっぷりある。
せっかくなのでこの界隈を散策してみると、百軒店(ひゃっけんだな)という裏路地に、カレー屋の「ムルギー」やロック喫茶「BYG」がいまだに健在なのに軽い衝撃を覚えた。BYGはたしか「はっぴいえんど」が演奏した場所ではなかったか? 東京にも時間が止まったような場所が残っているのだ。
さすがに歩き疲れたので、近くの珈琲屋で休憩しつつ時間をつぶす。
細野さんは少なからぬ映画音楽を手掛けている。にもかかわらず、これまで誰もそのことに言及しておらず、コンピレーション・アルバムも存在しない。「細野晴臣と映画」はいわば盲点だったわけで、今回の連続上映はそのあたりを衝いたユニークにして有益な企てである。
第一日目の上映作品は神代辰巳監督の「宵待草」。1974年、「青春の蹉跌」「赤線玉の井・ぬけられます」に続いて撮られた日活作品である。細野さんにとっては、これが初めての映画音楽だった(演奏はティン・パン・アレー)。
監督/神代辰巳 脚本/長谷川和彦 撮影/姫田真左久
出演/高橋洋子、高岡健二、夏八木勲、青木義朗 ほか
大正時代、二人のアナーキストが富豪の令嬢を誘拐するが、身代金を得られずに、三人で奇妙な逃避行を続ける…というストーリー。時代設定こそ違うが、藤田敏八の「赤い鳥逃げた?」となんだかよく似た展開だ。三人で銀行強盗を敢行するあたりは、日本版「ブッチ&サンダンス」か。
30年ほど前に一度観たときは今ひとつピンと来ない映画だったのだが、こうして再見してみて、神代監督のじわじわと粘り強い演出、「行き場を失った」青春を描ききる執念に、圧倒される思いがした。これはもうひとつの「青春の蹉跌」だったのだ!
細野さんの音楽は大正時代を意識してか、少々レトロな懐かしい響きがする。この少し前、彼は服部良一メロディの再解釈(雪村いづみ「スーパー・ジェネレーション」1974)と取り組んだので、その余韻が残っていたのかもしれない。
アルバム「トロピカル・ダンディ」所収の「漂流記」や「三時の子守唄」が使用されており、いかにも「使い回し」したような印象だが、実際はこの映画のほうが先で、その翌年「トロピカル・ダンディ」のB面にこれらの曲を流用した、というのが真相らしい。
しつこく対象に肉薄し、体温や息づかいまで伝える神代のスタイルと、冷静でシンプルで優しい細野さんの音楽とは、どう考えてもミスマッチ。でも、奇妙なことに「これでいいのだ」とも感じられる。そこに映画音楽というものの不思議さがあるのだろう。
終映後は佐野史郎さんのトーク。細野さんへの愛着が滲み出たいい話だった。
帰宅したら午前1時。そして今はもう3時近い。「三時の子守唄」を聴きながら眠るとしよう。