成城大学でプロコフィエフ研究の第一人者サイモン・モリソン教授(プリンストン大学)の講演「日本におけるプロコフィエフ」を拝聴した。モリソン教授はこれが初来日だそうだ。司会は今回の企画者でもある研究家の菊間史織さん。
1918年夏、ロシアを出国してアメリカを目指す途上でプロコフィエフが日本に二か月間も滞在し、東京と横浜で自作を中心とする国外初のピアノ演奏会を催し、大田黒元雄や徳川頼貞と親しく交友した事実は夙に知られているが、モリソン教授はさらに論を進め、滞日体験によりプロコフィエフの作風が変貌した可能性にも言及し、この時期をひとつの転換点と見做しうるという新鮮な視点を打ち出した。
そのうえで、渡米直後ニューヨークでの山田耕筰との遭遇にも触れ、出自を異にする二人の作曲家が同じ音楽的故郷――スクリャービンとドビュッシー――を共有する間柄であり、プロコフィエフと山田を同一の地平で論じる必要性にも言及した。
レクチャーの内容は多岐にわたり、粗略な要約を許さないものだが、多くの大胆な推論と驚きの細部に満ち、プロコフィエフの日本滞在の意味を再検討するよう、私たちに強く迫る圧倒的な力が漲っていた。