珍しく地元の千葉市内で(といってもJRとモノレールを乗り継ぐ必要があるのだが)面白いサロン・コンサートを聴いた。題して「弦と遊ぶ なかやすみ La Pause Musicale」といい、今回が第四回である。フランス在住の桂 朋子&ギヨーム・グロバール夫妻による二重奏のリサイタルだ。ヴァイオリンとチェロの常設デュオというのは世界的にも珍しいのではないか。
事前に演目が予告されなかったが、過去に何度か聴いたリサイタルがいずれも好印象だったので、今回も期待できそうだと考えて、灼熱のなか出向いた。コロナ禍により三年ぶりの来日だそうだ。会場は千葉市中央区市場町——かつての繁華街で、今はすっかり寂れた一郭にひっそり佇む「アートサロン」なる会場。すでに数十年の歴史があり、居心地よい小ぶりなスペースながら、二階席も合わせれば百人は収容できるという。そこに七十名ほどが参集した。午後二時開演。
クロード・ドビュッシー(グロバール編):
亜麻色の髪の乙女
イサーク・アルベニス(クライスラー&グロバール編):
タンゴ
アストル・ピアソラ:
タンゴ・エテュード 第三番 ※Vnソロ
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ:
無伴奏チェロ組曲 第三番 より ※Vcソロ
■ サラバンド
■ ジーグ
アンリ・デュティユー:
SACHER の名による三つのストロフ より ※Vcソロ
■ 第一曲
アントニオ・カルロス・ジョビン:
私の心を苦しめるために Pra machucar meu coração
エルヴィン・シュルホフ:
ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 より
■ 第二曲「ジプシー風に Zingaresca」
ベーラ・バルトーク(Karl Kraeuter編):
ハンガリー民謡の旋律(全七曲)より 四曲
(アンコール)山田耕筰: からたちの花
ともにオランダ室内管弦楽団(Nederlands Kamerorkest)の奏者として十年を過ごしたという二人は、さまざまな音楽に即応する優れた技量とヴァーサタイルな才能の持ち主。親しげなトークを合間に差し挟みながら、多彩な楽曲を次から次へと、いとも自然に繰り出すところは朋子&ギヨーム・デュオの真骨頂といえようか。
一見したところ脈絡なく並ぶ演目だが、バッハからピアソラ、ジョビンまで、時代と地域を超えて偏在する民族舞曲の系譜を緩やかに辿ったものといえそうだ。ヴァイオリンとチェロという、オリジナル作品のレパートリーが乏しいジャンルながら、演奏機会の少ない作品を発掘し、独自の編曲ものや独奏曲も織り交ぜて、面白く示唆に富むプログラムを構成するところはさすがである。変化に富みつつ、それでいて各曲が見えない糸で結ばれていたような、不思議な余韻が残る。
マチネー公演ということもあり、演奏時間は一時間強とやや短めだったが、デュティユーやシュルホフの楽曲を(部分的とはいえ)優れた実演で聴く貴重な機会が得られて幸せだった。ぜひ来年も里帰りが叶い、千葉に来演してくれるよう願っている。