昨日、ロンドンから訃報が届いた。12月28日、作曲家フレデリック・ディーリアス研究の第一人者ライオネル・カーリー(Lionel Carley)が亡くなられたという。ここ数か月間、心臓病を患い、チェルトナムの病院で加療中だった由。享年八十五。
ライオネル・カーリーは外交官から音楽研究に転じた人で、永年にわたりディーリアス・トラストのアーキヴィストを務めたのち、同トラストの相談役となり、2005年からはディーリアス協会の会長職にあった。ここ数十年間、常にディーリアス研究の第一線に立ち、その音楽の普及と正しい理解に尽力してきた。世界中のあらゆるディーリアン(ディーリアス愛好家)はカーリーが寄稿した数多くのCDライナーノーツを通して、その博識の恩恵に浴してきた。
ディーリアスの生涯を概観するには、彼が編者の一人だった写真集 "Delius: A Life in Pictures" (1977) が欠かすことのできない手引書だったし、この作曲家の交友関係をより深く知ろうと、カーリーが編纂した浩瀚なディーリアス書簡集 "Delius, A Life in Letters" (1983/88) 全二巻を座右に置き、頻繁に繙いた人も少なくあるまい。
病が膏肓に入り、さらなる奥の院に足を踏み入れて、ディーリアスとその時代の諸相をさまざまに探究したいと思ったら、そこでもカーリーが著した以下の三冊の書物に導かれることになる。
Lionel Carley:
"Delius: The Paris Years"
Triad Press, 1975
Lionel Carley:
"Grieg and Delius: A Chronicle of their Friendship in Letters"
Marion Boyars, 1993
Lionel Carley (ed.) :
“Frederick Delius: Music, Art and Literature"
Ashgate, 1998
このように、私たちがフレデリック・ディーリアスの生涯と作品とその時代に少しでも近づこうとするとき、いつも心強い先達として隘路を拓き、足元を照らし、行方を指し示してくれたのが、ライオネル・カーリーだった。ご冥福を心からお祈りする。