米国の絵本作家エリック・カール Eric Carle が5月23日に亡くなられたそうだ。享年九十一の大往生である。
エリック・カールといえば『はらぺこあおむし The Very Hungry Caterpillar』(1969)と条件反射で口をついて出る。1976年に偕成社から邦訳が出て、広く人口に膾炙した絵本である。
ほかにも彼の絵本は七十冊以上もあり、『ごちゃまぜカメレオン』とか、『ごきげんななめの てんとうむし』とか、『くもさん おへんじ どうしたの』とか、『ね、ぼくのともだちになって!』とか、翻訳されただけでも夥しくあるが、やはりカールは『はらぺこあおむし』の人である。少なくとも、わが国ではそうだし、小生の認識もそんなところだ。レオ・レオニのモダンな作風を受け継ぎ、より親しみやすくした絵本は、米国でも日本でも一世を風靡したといえそうだ。
エリック・カールのもうひとつの功績は、2002年に自らの名を冠した「エリック・カール絵本美術館 Eric Carle Museum of Picture Book Art」をマサチューセッツ州アマースト(Amherst)に開設し、自作のみならず、広く世界の絵本を蒐集・展示したことだ。
とりわけ開館から間もない2003年に、戦前のロシア絵本の先駆的な展覧会を催したことが小生には鮮やかに想起される。
From the Silver Age to Stalin: Russian Children's Book Illustration in the Sasha Lurye Collection
November 7, 2003 – January 18, 2004
入手したカタログから察するに、それほど大規模な展示ではなく、掲載された絵本は二十冊ほどに留まるが、このあと世界各地で相次ぐ一連のロシア絵本展の嚆矢となった展覧会として、歴史的にきわめて重要である。カタログの瀟洒なデザインが忘れがたい。
わが「幻のロシア絵本 1920–30年代」展が芦屋市立美術博物館で始まるのは、アマーストの展覧会が終わった翌月の2004年2月のことだ。思いがけない偶然の連鎖というほかなかろう。
優れた絵本作家として、また世界の絵本文化の継承者・紹介者として、エリック・カールの業績は末永く語り伝えられるだろう。謹んでご冥福をお祈りする。