昨日ツイッターでは「#こどもの日だから子供のジャケを貼ろう」のタグのもと、子供の姿をあしらったアルバム・カヴァー画像が数限りなく掲げられていた。ヴァン・ヘイレンもあればオールマン・ブラザーズ・バンドもある。物議を醸したスコーピオンズも、《バングラデシュ・コンサート》も忘れずにちゃんと挙げられている。
子供の日が過ぎて、今さら屋上屋を重ねるのもどうかと思うが、たぶん誰も挙げておられないようなので、このLPジャケットを追加しておこう。今は亡き米国のシンガー=ソングライターのフィービ・スノウの四枚目のアルバム "Never Letting Go"(1977)がそれだ。とりあえず、その表題曲をお聴きいただこうか(⇒これ)。
"Phoebe Snow: Never Letting Go"
1. Love Makes a Woman
2. Majesty of Life
3. Ride the Elevator
4. Something So Right
5. Never Letting Go
6. We're Children
7. Middle of the Night
8. Electra
9. Garden of Joy Blues
ヴォーカル/フィービ・スノウ
プロデュース/フィル・ラモーン
1977年、ニューヨーク、A&R レコーディング
例に依って自作と他作が入り混じる構成で(4 はポール・サイモン作)、2-3-6-7-8 がフィービの自作自演。表題作ともなった "Never Letting Go" は、スティーヴン・ビショップのデビュー・アルバム "Careless"(1976)所収の心に沁みる佳曲である。たしか石川セリもカヴァーしていたはずだ。
フィービの歌唱はいかにも雰囲気たっぷりだが、第二作 "Second Childhood" の焼き直しの感は否めない。LP時代、手にとってはみたものの、印象が希薄のまま、愛聴するまでには至らなかった。単に「唄の上手な女性」の小器用なアルバムにしか思えなかった。これ以後、フィービのアルバムをまともに聴いていない。
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本作で際立って秀逸だったのは、中身ではなくて愛らしいアルバム・カヴァーのほうだ。
セピア色の古風な写真は実際に昔のもので、これをニューヨーク公共図書館で見つけ出したデザイナー氏(Gene Greif と Paula Scher)のお手柄である。しかもこのジャケットには裏面があり、両方を繋げるとこんなイメージになる(⇒これ)。
どうです、素敵に可愛らしいでしょ? 表面が「問い」で、裏面が「答え」になっている謎々仕立て。あえて見開きジャケットにせず、表裏を引っくり返しながら、各自が頭のなかで画像を繋ぎ合わせるようデザイナーは誘う。その遊び心がなんとも床しいのだ。
このアルバム・カヴァーを拙著『12インチのギャラリー』に収録しそびれたのを、今もちょっと悔やんでいる。実は雑誌連載時には含めていたのだが、本に仕立てるとき大幅に改訂し、そのとき選に漏れてしまったのだ。残念なことをした。