米国を代表する高名なイラストレーターでグラフィック・デザイナーの大御所ミルトン・グレイザー Milton Glaser が6月26日に亡くなったそうだ。この日は奇しくも彼の九十一歳の誕生日だったのだという。まさしく功成り名遂げた大往生というべきか。
⇒『ニューヨーク・タイムズ』の追悼記事
訃報に接したのはつい今しがたなのだが、不思議なことに先週のこと、書庫をまさぐっていたら "Push Pin Graphic" という綺麗なグラフ雑誌がごっそり出てきて、しばしページを捲っては目を愉しませた。
この雑誌こそはミルトン・グレイザーが盟友シーモア・クワストと二人で創設したデザイン工房「プッシュ・ピン・ステュディオ」が出していた月刊誌だったのである。虫が知らせたのか? まさか、そんなこともあるまいが、偶然の符合にちょっと驚く。
かつて拙著『12インチのギャラリー』にも彼の小特集ページを設けたほか、ほうぼうに作品を掲載した。グレイザーの活躍の場はレコード・ジャケットに限らないが、音楽を触媒としたとき、最も自在に才能を発揮できた人だったと思う。謹んで巨匠の死を悼む。