いよいよウイルス感染の危機は世界的規模に拡大し、各国の政府は努めて外出を控えるよう市民に強く勧告している。
昨年の夏、たまたま愛知トリエンナーレで観た台湾の袁廣鳴(Yuan Goang-Ming ユエン・グァンミン)のヴィデオ作品《日常演習 Daily Manoeuver》(2017)が禍々しいリアリティを伴って脳裏に蘇ってくる。それは真昼の大都会を目抜き通りに沿って上空からドローンで撮影した五分ほどの映像なのだが、驚くべきことにそこには人っ子ひとり写っていないのである。
https://www.youtube.com/watch?v=1EQDxqlJP3U
映像は台湾で1978年から毎年、大陸からの急襲を想定して、今時分の季節に実施されている「萬安演習」なる防空訓練をそのまま撮影したものだ。道行く人々は三十分のあいだ屋内に退避し、自動車やバイクの交通も厳しく制限されるという。台湾人にとってはもはや年中行事となった日常的な光景なのだが、無人と化した台北の繁華街をクールに捉えた空撮映像は、平穏な日常の裡にいかなる脅威が潜んでいるか、私たちにまざまざと突きつけていた。
それから半年後の今、まさかその恐怖の光景が黙示録さながら世界中の都市で現実のものとなるとは想像も及ばなかった。