昨日の凍てつく霙(みぞれ)から一転して、窓から眩い陽光が射しこむ暖かい朝。ほの昏い穴倉を抜け出して春の空気を深呼吸せよとの天の思し召しだろうか。
そろそろ頼まれ仕事に取りかかるとしよう。少し長めの書評を書かなければならない。しばらく前に一読した本だが、昨今の騒動に妨げられ、内容をあらかた失念してしまったので再読を要する。依頼文には「予備知識のない読者を前提に、ひらがなで書くような気持ちでわかりやすくご執筆をお願いします」とある。言うは易く、行うは至難の業。はてさて、どうなりますやら。
必要に迫られた読書の伴侶にと、新たに手に入れたCDを卓上に並べてみる。マリー・ペルボー(ペルボスト?)というソプラノ歌手による肩の凝らないフランス歌曲集、ウィーンの名花アンナ・プロハスカが戦争に因んだ古今の歌曲に取り組んだ意欲作、グルックからモーツァルトを経てレナルド・アーンに至る「女声による男役」アリアばかり集めたマリアンヌ・クレバッサのアルバム、ユーニー・ハンなる未知の韓国ピアニストによるアーンの長大なピアノ曲集《思い惑う夜鶯 Le rossignol éperdu》全曲。
とりあえずこの四点を選んでみた。これらを一枚ずつ聴きながら、くだんの書物のページを繰りつつ、じっくり読み進めることにしよう。幸いなことに、時間だけはたっぷりある。