昨日(12月26日)は所用で上京したついでに神保町の書店で新刊書のハンティング。千葉の地元には碌な書店がないので、現物を手に取ることあたわず、「こんな本が出たのか」「新聞で書評されていたのはこれか」と現物で確認できる貴重な機会なのだ。
店頭に面陳されていた『ユリイカ』最新号をレジに持参した。「特集・和田誠」とある。全278ページの大半が特集に割かれている。追悼特集の決定版だろう。
和田さんは、国から贈られる褒章はすべて断ってしまう人でした。業界の装幀賞などは受けとるけれど、国から与えられる賞は一切受けとらない。ものすごく徹底していました。けれど生意気だとか神経質だとかいうわけではないんです。心の中はわからないけれど、あまり激しく怒ったりもしなくて、単純に相手にするのも馬鹿らしいという感覚だったんじゃなかったかなと思います。パーティーも嫌いで、ドレスコードにも無頓着でした。いつもジーパンなんです。威張っている人や上から目線の人をとにかく嫌っていました。でもそれはきっと、優しさからくる怒りだったんじゃないかと思います。すごく優しくて、すごく恐ろしい人だと、個人的には解釈しています。(細谷 巖)
冒頭に谷川俊太郎が追悼詩を寄せ、細谷巖、宇野亞喜良、横尾忠則、矢崎泰久、森卓也、矢吹申彦、高平哲郎、古川タク、清水ミチコ、鈴木一誌、土井章史ら三十一名が追悼文を寄せる。「和田さんと/の楽しいお話」と題して南伸坊と三谷幸喜が追悼対談する。どれもが胸に沁みる。どれもがいい。おまけに若き日の和田誠による稀少なエッセイが二本。こんな一冊が編まれるのも間違いなく和田誠という稀有な人物の才能と人徳のなせる業だろう。惜しむらくは故人をまるで感じさせない無機質・場違いな表紙デザインだ。それを除けばよく行き届いた、心のこもった特集。