このところツイッターでは「#目撃した演奏会事故」というハッシュタグが賑わっている。生身の人間がやることだから、演奏会には突発事故や不測の事態がつきものである。小生も半世紀間にいろいろ実地に見聞した。思いつくまま時系列に五件を投稿した。
その2)
1973年3月のウィーン・フィル公演、初来日のクラウディオ・アッバード指揮で大過なく進むが、アンコールの《美しく青きドナウ》中間部でフルートが派手に出を間違う大失態。さすがに会場がどよめいた。たぶんリハーサル抜きで本番に臨んだのだろう。上手の手からも水が漏れた。
その3)
最も怖かったのは1973年5月、ムラヴィンスキーの初来日公演。二曲目のプロコフィエフ《ロミオ》組曲の冒頭、張りつめた最弱音のところで客席からソプラノの歌声が! 不心得者が盗み録りしようと誤って再生ボタンを押したのだ。即座に演奏会中止を覚悟したが、無事そのまま続行。
その4)
1993年12月、シャンゼリゼ劇場でソプラノ歌手ジューン・アンダソンの独唱会。途中で声が不調になり中断。舞台から「申し訳ないが曲目を変更させて」と懇願。すかさず客席から "Vous avez raison !"(それでよし!)の声が上がり、演奏会はつつがなく続行。愛ある聴衆に感心した。
その5)
2013年3月、オーケストラ・アンサンブル金沢の東京公演。北朝鮮でインフルエンザに罹ったとかで井上道義が振れず、指揮者なしで危なっかしいプロコフィエフの《古典交響曲》。案の定、終楽章でフルートの工藤重典がソロの出をしくじる。やはり指揮者は必要なのだと痛感した。