千葉県民になって四半世紀近いが、いまだかつて足を踏み入れていない未知の領域がいかに大きいことか。
急峻な山岳地帯こそないものの、半島の内陸部は人跡まばらな丘陵や段々に耕された里山だし、自動車でないと辿り着けない僻地だらけである。在来線もあるにはあるが、本数が少なく接続も悪く、鉄路の旅は容易でないのだ。
このたびの颱風は想定外の被害をもたらし、未だに数万世帯で停電や断水が続いていると聞き、同じ千葉県民として胸が痛んでいる。かつて訪れ散策したあの村、あの里の暮らしは今どうなっているのか。
皮肉な成り行きだが、千葉県内のローカルな地名がこれほど頻繁に報道され、人々の口の端の上ったことはなかっただろう。
八街(やちまた)、酒々井(しすい)、山武(さんむ)、匝瑳(そうさ)、犢橋(こてはし)、夷隅郡大多喜町(いすみぐんおおたきまち)などなど。名だたる難読地名が定時ニュースで連呼される日が来ようとは! しかもそれが遅々として復旧の進まない被災状況なのだから悲しくなる。