名古屋への出張や原稿の締切に追われているうちに、DIC川村記念美術館から小さな荷物が届いていた。中身はこの春に開催された「ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ」展のカタログである。すっかり忘れていたが、このたび第二版が出来上がった。ただし完全予約制。あらかじめ申し込んでおいた者のみが入手できる。小生はカタログ校閲者なので特別に一冊を頂戴できたという次第。嬉しい役得である。
本カタログは諸般の事情で製作が遅れに遅れ(校閲者のせいではない)、初版が出来上がって美術館に並んだのは、なんと展覧会最終日になってからだった。ショップにはカタログを求める長蛇の列ができた。
刊行の遅れにもかかわらず、カタログの売れ行きはすこぶる好調で、たちまち入荷分を完売した。展覧会がそれだけ強く支持されていた事実の表れだろう。一般の書店にはほとんど並ばなかったのではないか。
したがって、展覧会は観たのにカタログを買いそびれた者が続出し、遠隔地なので、せめてカタログだけでも手元に、の声もそこに加わった。こうして、なんとしても入手したいという読者の切なる要望に押される形で、版元のフィルムアート社は(逡巡のすえ)重版を決断したそうな。
会期が終わってから展覧会カタログが増刷された例は(小生の知る限りでは)わが国でほとんどないと思う。現今のコーネル人気はかくも絶大だったのである。1992~93年に最初のコーネル展を手がけたスタッフの一人として、まさに隔世の感を禁じ得ない。
上にも書いたように、このたびの増刷はあらかじめ予約した者のみを対象とする限定発売であり、書店の店頭で手にする機会はまずないだろう。予約時には三種類ある外箱のいずれかを選べる特典があり、どれにするか迷う者も多かったはずだ。ひょっとして三種すべてを注文した酔狂なコーネル愛好家もいたのではないか。それほどまでに、本カタログは初版時に好評を博したのだ。
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増刷が決まった際、校閲者である小生は要改訂箇所を尋ねられた。とりたてて糺すべき問題点はなかったが、展覧会担当者の判断で、いくつかカラー図版の刷色が改善された由。ただし一見して判然としない。
というのも、本カタログは判型が小ぶりなうえ、紙質の選択を誤ったせいで、図版は総じて色調がくすんで沈みがちだ。作品のディテールが潰れてしまい、明暗の諧調のニュアンスにも乏しい。全体に淀んで濁った感じがする。過去に世界各地で出たコーネルの画集や展覧会カタログで、ここまで発色が悪い例はちょっと思いつかない。
この点に関しては、製作の一端を担った者として恥じ入るばかりである。問題点は初版の入荷時にすべて展覧会担当者に口頭で伝えてあるが、判型や用紙の選定はデザイナーの領分であり、重版時に今さらどうにも施す手はないという返答だった。残念の極みだ。
いかに本として装丁が美しく、オブジェとして完成度が高くとも、展覧会カタログには出品作を忠実に再現し、記録するという役割があることを美術館は肝に銘じておくべきだろう。美しいだけでは駄目なのだ。