アルベール・ルーセル生誕百五十年に因んで、滅多に見かけないLPアルバムを手に入れた。ただし届いたのがつい昨夕のこと。まだ針を落としていないので、演奏については未知数である。
"Martin/Tortelier/Roussel -- London Chamber Orchestra/Tortelier"
フランク・マルタン: 小協奏交響曲
ポール・トルトゥリエ: 捧げもの(Offrande)
アルベール・ルーセル: シンフォニエッタ
ポール・トルトゥリエ指揮
ロンドン室内管弦楽団
1971年1月5、6日、ロンドン、コンウェイ・ホール
Unicorn UNS 233 (LP, 1971) →アルバム・カヴァー
トルトゥリエ指揮、といっても現役の指揮者ヤン=パスカル・トルトゥリエではなく、彼の実父である名チェロ奏者ポール・トルトゥリエがタクトをとった珍しい録音だ。こんなアルバムが存在していたのを迂闊にも知らなかった。そもそも父トルトゥリエが指揮した録音があることすら失念していた。
マルタンの《小協奏交響曲》はハープ、チェンバロ、ピアノを独奏楽器とし、そこに二組の弦楽合奏が絡むという一種の合奏協奏曲。パウル・ザッハーの依頼で作曲され、1947年に初演された。ルーセルの《シンフォニエッタ》の由来については最近も記したので、ここでは繰り返さない。三楽章からなる弦楽合奏のための小交響曲だが、円熟した書法による小さな傑作である。
マルタンとルーセルの間に自作を挟んでいるところが手前味噌だが、そこに面白味もある。彼自身が記したライナーノーツによれば、弦楽合奏のための《捧げもの》はベートーヴェン生誕二百年にあたる1970年に作曲され、三つの楽章それぞれに彼の交響曲のモティーフを引用し、さりげなくオマージュが捧げられている由。はたしてどんな曲だろうか。
1968年に創設された英国の独立レーベル Unicorn の初期録音の例に漏れず、LPで出たきり一度もCD化されないまま忘却の淵に沈んでしまった。同レーベルはとっくの昔に消滅したので、もう二度と復活することはなかろう――そう思うと不憫になり落札してみた。もちろん嘘のような安価で。
アルバム・カヴァーを飾るのはアンリ・ルソーの油彩画《入市税関》(1890頃 →これ)。言うまでもなく税官吏ルソーはここを永年にわたり自らの職場とした。ロンドンのコートールド・ギャラリーが所蔵する逸品であり、おそらく来年には日本でも展示されるだろう。