やっとの思いで連載の美術記事を仕上げて発注元に送ったところ。昨日の締切日を守れなかったが、まあいつものことだ。冒頭を書いたまま先へ進めず、どうなることかと気を揉んだが、今朝その続きに着手すると嘘のように易々と進捗した。こんな短い原稿に難渋するのは我ながら不甲斐ない。拙ブログの投稿記事ならば、いくらでも書けるのにね。
そんなわけで肩の荷が下りて、ホッと一息つく。外は春を告げるような日和である。ただし空気は思いのほか冷たい。
今の気分に相応しいかどうか、こんなディスクを聴いている。
"Franck - Schumann - Brahms: Wispelwey - Giacometti"
フランク: チェロ・ソナタ イ長調
シューマン: アダージョとアレグロ 作品70
ブラームス: チェロ・ソナタ ニ長調 作品78
チェロ/ピーテル・ヴィスペルヴェイ
ピアノ/パオロ・ジャコメッティ
2001年春、デフェンテル、ドープスヘジンデ教会
Channel Classics CCS 18698 (2002) →アルバム・カヴァー
先日たまたまヤーノシュ・シュタルケルが弾いたブラームスのチェロ・ソナタ(第一ヴァイオリン・ソナタの編曲版)が見事な出来映えだったので、同曲を他の奏者で聴こうと中古盤で入手した。
本CDでも面白いことに、収録作品のすべてが編曲物だ。フランクとブラームスはともに名高いヴァイオリン・ソナタが原曲、シューマンはホルンとピアノの二重奏が本来の形である。
CDのライナーノーツではなぜか編曲の経緯が全くオミットされているが、フランクは同時代のチェロ奏者ジュール・デルサール(Jules Delsart)が手がけた版であろう。もっとも、本来この曲はチェロのために書き始められたという噂が絶えない。真偽のほどは知らないが。
シューマンの《アダージョとアレグロ》は作曲者自身が認めた代替版(ヴァイオリン版もある)。
ブラームスはシュタルケルの説に従えば、晩年の作曲者自らがチェロ用に編曲したヴァージョンで、調性が変えられた(ト長調→ニ長調)ほか、独奏部にも伴奏ピアノにも多くの小さな変更が加えられた由。
ヴィスペルヴェイのチェロは、当然ながら音色も弾きぶりもシュタルケルとは大いに異なるが、申し分のない名演である。過度に歌い過ぎぬよう抑制がかかるが、それが却って音楽の美質を高めているようだ。
こういう達人の手にかかると、編曲物かオリジナル作品かの区別など、どうでもよくなり、ひたすら聴き惚れるばかり。仕事が一段落した安堵感がじわじわ全身にこみ上げた。