よせばいいのに、悪いこととは知りながら、違法な海賊盤にもついつい手を伸ばしてしまう。海外の放送音源をエアチェックし、無許可でCD-Rに焼いただけの粗悪な代物、ライナーノーツも演奏家の写真も載っていない。欧米の大手レコード会社が軒並み「死に体」となって、碌な新録音が出ない状況がずっと続いているから、とりあえずその代替物としての必要悪というわけだ。
ブラームス:
ハイドン変奏曲
シュトラウス:
オーボエ協奏曲*
組曲《薔薇の騎士》
オーボエ/アレクセイ・オグリンチュク
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
2007年8月5日、ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール(実況)
Refine Classic RC-484RE
ホルスト:
《惑星》
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮
ロシア国立シンフォニー・カペラ
2013年9月16日、モスクワ(実況)
Refine Classic RC-482RE
プロコフィエフ:
組曲《キジェー中尉》
バルトーク:
狂詩曲 第一番*
ショスタコーヴィチ:
交響曲 第六番
ヴァイオリン/ミリアム・フリード*
キリル・コンドラシン指揮
クリーヴランド管弦楽団
1979年7月28日、カヤホガ・フォールズ、ブロッサム・ミュージック・センター(実況)
Refine Classic RC-122RE
ラヴェル(マリユス・コンスタン編):
《夜のガスパール》
デ・ファリャ:
《スペインの夜の庭》*
シュトラウス:
四つの最後の歌**
ピアノ/ジュリア・バルタ*
ソプラノ/エミリー・マギー**
ガブリエル・フェルツ指揮
シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団
2007年6月28日、シュトゥットガルト、ベートーヴェンザール(実況)
Refine Classic RC-520RE
ワイル:
《七つの大罪》*
シュトラウス:
ホルン協奏曲 第二番**
ベートーヴェン:
交響曲 第五番
メゾソプラノ/アンゲリカ・キルヒシュラーガー*
テノール/アルノルト・ベズイエン、ベルンハルト・ベルヒトホルト*
バリトン/ダニエル・シュムッツハルト*
バス/クリスティアン・ファン・ホルン*
ホルン/シュテファン・ドーア**
サイモン・ラトル卿 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2009年4月7日、ザルツブルク、祝祭大劇場(実況)
Refine Classic RC-110RE
ご覧のとおり、世が世であれば正規盤として発売されてもおかしくない演奏内容の非公式ディスクがずらり並ぶ。海賊だから国籍不明だが、たぶん国産品だろうと思う。
晩年のロジェストヴェンスキーは録音に恵まれず、その円熟した芸境は、放送局に残されたライヴ録音にしか記録されていない。
一枚目は英都プロムズ実況。当夜はブラームスの変奏曲のあと、エルガーの《エニグマ》変奏曲が奏され、後半がシュトラウスという絶妙な曲目配置だった由。オグリンチュクというオーボエ奏者が驚異的に巧い。最後の《薔薇の騎士》組曲はロジェストヴェンスキー一世一代の名演である。
ロジェストヴェンスキー翁はまた、2013年モスクワで「霧深きアルビオン(Foggy Albion)」と題して、20世紀の英国音楽の連続演奏会(全十二回!)を催しており、ホルストの《惑星》はおそらくその一環として演奏されたものだ。
亡命後のコンドラシンの短すぎた晩年についても事情は同じだ。彼がクリーヴランドに客演したプロコフィエフとバルトークとショスタコーヴィチの実況音源があると知ったら、誰しも聴いてみたいと思うだろう。
四枚目は歌曲集《四つの最後の歌》完全蒐集プロジェクトの一環として。正直言って自暴自棄の買い物だ。まるで知らない歌手と指揮者の組み合わせというのも乙なもの。ゆったりとしたテンポを保った歌唱も演奏も悪くない。
最後の二枚組はザルツブルクでのラトル&ベルリン・フィルの一夜を丸ごと収録。昔からラトルが得意とするブレヒト&ワイルの《七つの大罪》が最大の聴きものだ。バーミンガム時代にスタジオ収録した旧盤とは比較にならない秀演であり、背筋がゾクッとする。
いやはや、こんな怪しげな音源まで買い集めていたら、遠からず我が身の破滅を招くことだろう。それでも一向に構わないのだが。