ああ、今やっとの思いで懸案の連載原稿を仕上げ、先方へ送ったところ。短いものだが、ひどく苦しんだ。字数が少ないから楽だろうと思ったら大間違い。むしろ短いがゆえに、書き出しをしくじると、二進も三進も行かなくなる。こういう文章がさらりと書けたなら、名エッセイストになれるのだが。
では、このあたりで一息つこう。濃い珈琲でも淹れて。休憩のお供のディスクはこれにした。
"Witold Rowicki: Haydn -- Beethoven"
ハイドン:
交響曲 第九十四番《驚愕》*
ベートーヴェン:
交響曲 第三番《英雄》**
ハイドン:
交響曲 第百四番《ロンドン》***
ベートーヴェン:
交響曲 第七番****
ヴィトルド・ロヴィツキ指揮
ワルシャワ国立フィルハーモニー交響楽団* **
ポズナニ国立フィルハーモニー交響楽団***
カトヴィツェ放送交響楽団****
1968年3月16日、ワルシャワ、フィルハーモニー楽堂*
1976 年6月7日、ワルシャワ、フィルハーモニー楽堂**
1955年12月29日、ポズナニ、フィルハーモニー楽堂***
1956年5月19日、カトヴィツェ****
Muza PNCD 472 A/B (1999)
ポーランドの名匠ヴィトルド・ロヴィツキ(1914~1989)を憶えている人は今どき稀かもしれない。
戦後、壊滅状態だったワルシャワ・フィルを立て直し、世界的なレヴェルにまで叩き上げた。ペンデレツキ、ルトスワフスキらポーランド戦後派の作曲家の信頼を得て、いくつも初演を任され、少なからぬ録音を残した。
一般にはワルシャワのショパン・コンクール本選会での名伴奏ぶりで知られ、1965年のマルタ・アルヘリッチ、1970年のギャリック・オールソンとの実況録音で知られよう。1965年の本選会で共演した中村紘子はロヴィツキの気に入られ、その後も共演を重ねた末、ロヴィツキ&ワルシャワ・フィル来日時にショパンの第一協奏曲を正規録音した(ソニー)。
手兵ワルシャワ・フィルを率いて何度か来日したほか、単身でも読売日本交響楽団に客演して、ドヴォジャークの《新世界》交響曲の目覚ましいスタジオ録音(学研)を残している。
小生は生演奏こそ聞き逃したが、ロヴィツキの端倪すべからざる実力を知ってからは、彼のディスクを逃さず聴くように努めている。
このドイツ古典派の交響曲を集めた二枚組は彼の歿後十周年を期して出されたものだが、もはやかなりの稀少盤。ここ数年ほどやっきになって探した挙句、先日お茶の水の中古店で嘘のような安価で出くわした。
(まだ聴きかけ)