先ほどベルナルド・ベルトルッチの訃報に接する。つい先日、初期の傑作《暗殺のオペラ》を再見したばかりなので愕然とする。享年七十七は今どき早すぎるというべきだろう。椎間板ヘルニアの悪化で車椅子生活を余儀なくされ、最後は癌に冒されたという。痛ましい限りだ。
最初に映画館で観たベルトルッチ作品は《ラストタンゴ・イン・パリ》だと思う。その後《暗殺の森》をTV放映で観て、《暗殺のオペラ》と《ルナ》には試写会で出逢い、魔法のような画面設計に陶酔した。《1900年》は封切時に観て大昂奮したし、未公開作《ある愚か者の悲劇》を観たくてイタリア文化会館の上映会にまで足を運んだ。すべて懐かしい思い出である。ベルトルッチが映画愛好家の崇敬の的だった時代のことだ。
ただし憧れが続いたのは《ラストエンペラー》あたりまで。《シェルタリング・スカイ》《リトル・ブッダ》《魅せられて》《シャンドライの恋》と凡作が続き、それ以降の作品は未見のままだ。魔法は跡形なく消え失せてしまった。どうしてそうなったのかは知る由もない。
今一度スクリーンで観たいベルトルッチ作品はどれだろう。
《1900年》も《ラストエンペラー》もちゃんと映画館で見直したいが、永年ご無沙汰の《ラストタンゴ・イン・パリ》こそ観てみたい。セクハラ疑惑はひとまず措いて、あの映画のなかに《アタラント号》に目配せしたシーンがあったような気がする。それをこの目で確かめてみたいのだ。
とにかく今は不世出の偉才の死に、謹んで哀悼の意を捧げるのみ。監督のことはいつまでも忘れません。