せっかくなので九月が終わる前に、プロコフィエフをもう一枚だけ。これまた以前からの愛聴盤であり、拙ブログで何度も推奨したアルバムなのだが、またしても聴いてみる。
"Prokofiev: Violin Sonatas: Fujikawa/ Sheppard"
プロコフィエフ:
ヴァイオリン・ソナタ 第一番
ヴァイオリン・ソナタ 第二番
五つのメロディ op.35bis
ヴァイオリン/藤川真弓
ピアノ/クレイグ・シェパード
1989年3月13、14日、モーデン、セント・ピーターズ教会
ASV CD DCA 667 (1989) →アルバム・カヴァー
倒産してしまって今はない英国のASVレーベルから三十年近く前に出たアルバム。ここでの藤川真弓のヴァイオリンが絶妙なのだ。
彼女が弾くプロコフィエフがここまで秀逸なのは、かつての師レオニード・コーガンの薫陶の賜物なのか。
かつて書いたごく短い拙レヴューを引く。
深いところで心を揺さぶり、掻き乱すような演奏。とりわけ第一番。作品の神髄に迫る素晴らしさだ。第二番も単なる静穏な安らぎに留まらぬ厳しさがある。藤川真弓にどうしてここまでの名演が可能だったのか。ほとんど評判にならなかった盤だが、プロコフィエフの評伝作者ダニエル・ジャッフェが巻末の推薦盤リストで同曲随一の演奏と推すのはさすがの烱眼だろう。
作為の欠片もないまっすぐ素直な演奏なのに、表現が深いところまで届く。蓋し稀代の名演であろう。日本クラウンから国内盤も出たが、今となってはもう探し出せないかもしれない。忘れ去られるにはあまりにも惜しい一枚。