ひたすら暑い一日だった。ほんの少し外出しただけで汗みどろになって消耗し、全身が水分を欲していた。拙宅のある千葉市内では最高気温が35度を突破したそうな。夏至の季節を古人が「真夏 Midsummer」と呼び習わしたのは、なるほど故なしとはしない。
そんなわけで、夜更けてようやく涼しくなった外気を窓から取り入れながら、今の季節に最もふさわしい音楽を聴くことにしよう。
"Mendelssohn: A Midsummer Night's Dream/ Jeffrey Tate"
メンデルスゾーン:
劇音楽《真夏の夜の夢》全曲
ソプラノ/リン・ドーソン
メゾソプラノ/ズザンネ・メンツァー
ジェフリー・テイト指揮
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
ロッテルダム・フィルハーモニー合唱団
1990年9月、ロッテルダム、コンセルトヘバウ・デ・ドゥーレン
EMI CDC 7 54393 2 (1991) →アルバム・カヴァー
昨年六月、惜しまれつつ世を去った名指揮者ジェフリー・テイトの《真夏の夜の夢》は、不幸にして取り沙汰される機会の尠い「知られざる名盤」だ。各楽器のバランス、細部の彫琢具合が比類なく、繊細の極みと称すべき秀演。音楽から心地よい微風がそよと漂い出す感じがする。
モーツァルトの解釈者としての令名があまりに高く、スペシャリストのように看做されたのがテイト最大の不幸だった。彼こそはヴァ―サタイルな指揮者の典型であり、古典から20世紀音楽まで、オペラを含めて膨大なレパートリーを閲していた。にもかかわらず、残されたディスクの大部分はモーツァルト。これでは故人も浮かばれまい。