上京が二日続いたので疲労が澱のように沈澱している。今日はどこにも出かけず仕事もしない休養日と決めた。
ふと思い立って聴いているディスクは、カナダが生んだ不世出のコントラルト歌手モーリーン・フォレスターによるバッハのカンタータそのほか。心身が疲れたとき、温かい母性そのものというべき彼女の声が無性に聴きたくなるのだ。
"Bach: Cantatas/ Scarlatti: Salve Regina -- Forrester"
バッハ:
カンタータ 第170番《満ち足れる安らぎ、嬉しき魂の悦びよ》*
カンタータ 第53番《いざ打てかし、願わしき時の鐘よ》**
ミサ曲 ロ短調 より「アニュス・デイ」***
ドメニコ・スカルラッティ:
《サルヴェ・レギーナ》****
コントラルト/モーリーン・フォレスター
アントン・ハイラー指揮 ウィーン・ゾリステン* ****
アントニオ・ヤニグロ指揮 ザグレブ合奏団** ***
1964年** ***、1965年* ****、ウィーン
Amadeus--Seymour Solomon Collection AMD 7010 (2000)
→アルバム・カヴァー
"Maureen Forrester aings Bach & Handel"
バッハ:
《ヨハネ受難曲》より「すべては成就した」
《マタイ受難曲》より「愛する救い主よ」「懺悔と後悔の念は」
《マタイ受難曲》より「憐れみ給え、わが神よ」
ヘンデル:
《サムソン》より「帰り給え、万軍の神よ」
《エフタ》より「戦慄の場」
《メサイア》より「彼は侮られ」
《メサイア》より「よき訪れを告げる君よ」
バッハ:
《クリスマス・オラトリオ》より「シオンよ、準備せよ」
カンタータ 第53番《いざ打てかし、願わしき時の鐘よ》
カンタータ 第54番《罪に手向かうべし》
カンタータ 第169番《神にのみ我が心を捧げん》
コントラルト/モーリーン・フォレスター
アントニオ・ヤニグロ指揮
ザグレブ合奏団
1964年6月15~17日、ウィーン、コンツェルトハウス、グローセザール
Vanguard SVC 64/65 (1997) →アルバム・カヴァー
半世紀前の旧式のバロック演奏だが、フォレスターの歌唱は時代や流行を超越して、心にじんわり沁み込む。こんなにも包容力があって安らぎに満ちたバッハを、古色蒼然の一言で片づけないでほしい。