■ 2000年5月27日
バッハ:
農民カンタータ BWV212
珈琲カンタータ BWV211
管弦楽組曲 第二番 BWV1067
■ 2001年1月20日
モンテヴェルディ:
歌劇《ポッペアの戴冠》
バッハのカンタータを半ば解体し、その合間に管弦楽組曲からの断章を挟み込むという大胆な発想で企てられた前者の演奏会もさることながら、やはり圧倒的な感銘を受けたのは《ポッペア》全曲上演である。
2000年初夏、パリでの休暇中たまたまマルゴワール指揮「バッハの夕」に遭遇した折り、次シーズンには同じシャンゼリゼ劇場で、彼がモンテヴェルディの三つのオペラ、すなわち《オルフェオ》《ウリッセの帰郷》《ポッペアの戴冠》を連続上演するとの予告を目にし、「あゝ、なんと贅沢な! パリが羨ましいな」とひとりごちたものだ。
ところが2001年1月、展覧会の準備で訪欧した折り、パリでも所用で数日間を過ごすことになり、その時期が偶然にも《ポッペア》上演と合致していたのだ(因みに、このときのパリ滞在ではオルセー美術館で「ニジンスキー展」と「チュルリョーニス展」も観た。なんたる僥倖!)。
ピットにずらり並んだ古楽器群、カジュアルな黒の服装でさりげなく指揮する好々爺然としたマルゴワール翁。彼は演出にも加わっていた。
舞台上には白一色の簡素な装置が置かれ、歌手たちは誰もが声自慢の芸達者。申し分のない上演だったと記憶する。主なキャストを書き写しておく。
オットーネ/ドミニック・ヴィス
ポッペア/ロランス・フランソワ
ネローネ/ヤチェク・ラシュコフスキ
オッターヴィア/ステファニー・ドゥーストラック
ドルジッラ/オルガ・ピタルチ
セネカ/ピエール・ティリオン=ヴァレ
小姓/フィリップ・ジャルスキー ほか
十七年前に旅先で観た《ポッペア》をつぶさに思い出せないのは残念だが、これが小生が実見したバロック・オペラのなかで一、二を争う秀演であったことは疑いえない。なにしろマルゴワールは古楽器による正統的な《ポッペア》全曲録音を最初に成し遂げた人なのだ。
それからというもの、新旧を問わずマルゴワール指揮の音源や映像を躍起になって集めてきた。彼のレコードには1970~80年代に出たきり二度と再発売されていない例が少なくなく、なかには稀覯盤と化してしまったものもある。上述した《ポッペアの戴冠》(1984収録 →アルバム・カヴァー)がまさにその典型例なのは、あまりにも悲しいことだ。