今朝は穏やかな春日和。昨日は大風が吹き荒れ、明日は雨降りだというから、ひとときの静寂と暖かい陽気を大切に慈しみたい。
こんな清々しく気持ちのよい朝に聴くべき音楽は・・・。先日、たまたま新宿の中古店で見繕ってきたこの一枚はどうか。
"Richard Strauss : Horn Concertos etc."
リヒャルト・シュトラウス:
ホルン協奏曲 第一番*
《アルプホルン》av29**
《アンダンテ》av58***
ホルン協奏曲 第二番****
ホルン/ラドヴァン・ヴラトコヴィッチ
メゾソプラノ/アン・マレイ**
ピアノ/ジェフリー・テイト** ***
ジェフリー・テイト指揮
イギリス室内管弦楽団* ****1988年11月、ロンドン、アビー・ロード第一スタジオ
EMI CDC 7 49867 2 (1990)
→アルバム・カヴァーザグレブ生まれの名手ヴラトコヴィッチの独奏があまりに軽々と、易々と吹かれるので勘違いしてしまいそうだが、シュトラウスの第一ホルン協奏曲は(少なくとも作曲当時には)演奏が至難な曲なのだという。
事実これを作曲する機縁となった作曲家の実父フランツ・シュトラウスは、この曲を吹くのにたいそう難儀した由。このCDを聴く限り、吹き過ぎる一陣の春風のように思える。ヴラトコヴィッチ恐るべし。
第二ホルン協奏曲もそれなりに佳曲だが、第一ほどの若々しい春風駘蕩はない。それもそのはず、こちらはシュトラウス最晩年の作品なのだ。ヴラトコヴィッチの演奏も心なしか翳りを帯びて響く。ジェフリー・テイトの周到な指揮も、この曲を傑作と感じさせるには至らない。
本アルバムの嬉しい余録はフィルアップ用に収録された二つの小品だ。LP時代にシュトラウスの協奏曲といえば表裏に一曲ずつでイッパイイッパイだったのが、CDでは収録時間にまだ余裕があるのだ。
いずれもピアノ伴奏。《アルプホルン》なる曲ではアン・マレイのメゾソプラノまで加わる。知られざる名手であるテイトの秀逸なピアノが聴けるのが嬉しい。なんだか得した気分になる。