青柳いづみこさんが企画・監修され、演奏にも加わった新譜CD《クロード・ドビュッシーの墓》がいよいよ発売になった。
昨日ちらと新宿のタワーレコードに立ち寄ったとき、この美しい青のジャケットが目立つ場所に面陳されていて、入荷済なのをしかと確かめた。ライナーノーツ執筆で関わった者として、こみ上げる歓びを抑えきれない。
ドビュッシー歿後百周年の今年、内外でさまざまな記念アルバムが企画されているはずだが、そのなかにあって本盤は間違いなく白眉と呼ぶべき際立った内容を誇る。なにしろ十九もある収録曲のうち、ドビュッシー本人の作品はわずか一曲のみ。あとは(冒頭のラヴェル作品を除き)周囲の作曲家たちが彼に捧げたオマージュ作品ばかり集めた特異な一枚だからだ。
ポピュラー音楽の世界では常態化している「トリビュート・アルバム」だが、それをドビュッシーという対象に向けて実現させたところに、永年この作曲家の探索を続けてこられた青柳いづみこさんの真骨頂があると思う。共演者お二方(西本夏生さん、福田美樹子さん)の人選も適材を得ている。これは世界に誇っていい究極のドビュッシー・アルバムだ。
《クロード・ドビュッシーの墓 Le Tombeau de Claude Debussy》
ラヴェル: 亡き王女のためのパヴァーヌ (連弾版)* **
楽譜集《クロード・ドビュッシーの墓》(1920)
■ デュカ: 牧神の遥かなる嘆き*
■ フローラン・シュミット: そして牧神は月あかりの麦畑に肘をついて横たわる*
■ ストラヴィンスキー: 管楽器のためのサンフォニーの断章* **
■ ルーセル: ミューズたちのもてなし**
■ マリピエロ: 讃歌**
■ バルトーク: 無題(ソステヌート、ルバート)**
■ グーセンズ: 無題(モルト・モデラート・コン・エスプレッシオーネ)**
■ デ・ファリャ: 讃歌(ギターのための/ピアノ版)**
■ サティ: 三十年間の麗しい友情の思い出に(詞/ラマルティーヌ)* ***
カゼッラ: ドビュッシー風に(準備中の劇のための間奏曲)*
サティ: 牧歌(ドビュッシーへ) ~《最後から二番目の思想》* ***
コダーイ: 墓碑銘**
タイユフェール: ドビュッシーを讃えて*
ロザンタール: ドビュッシーを讃えて*
『音楽新潮』ドビュッシー特輯号の楽譜(1935)
■ 清瀬保二: ドビュッシーに捧ぐる讃歌 (詞/前田鉄之助)* ***
■ 石田一郎: Hommage à Debussy*
■ 荻原利次: Hommage à Debussy*
ドビュッシー: 神聖な舞曲と世俗の舞曲 (連弾版)* **
ピアノ/青柳いづみこ*、西本夏生**
ソプラノ・朗読/福田美樹子***
2017年12月26~28日、東京、五反田文化センター 音楽ホール
アールレゾナンス RRSC-20004 (2018) →アルバム・カヴァー