王子、早稲田、白金と都内を巡り歩いた一昨日の観桜ツアーでは、道中に思いがけない歓びと驚きがあった。
王子から早稲田までの移動手段だった都電「荒川線」の車窓からの鄙びた眺め。昼食に立ち寄った早稲田大学の学食での愉しいひととき(安価でそこそこ旨く、春休みで空いていた)などなど。予想だにせぬ再会の驚きまで加わった。
迷い迷い、やっと辿り着いた「新宿区立漱石山房記念館」で、疲れた脚と汗ばんだ体を休めるべく、見学前にまず、併設されたカフェに家人と立ち寄り、珈琲と柿風味のアイスクリーム(美味!)をいただいていたら、背後から「沼辺さん!」と声をかけられた。
振り返ると、
新宿区文化観光課の北見恭一さんがそこに佇んでいた。十数年前、新宿区の博物館が解説ヴォランティアを育成するときに何度か講師としてお手伝いしたことがあり、小生はそのとき北見さんと知遇を得た。彼はその後は新宿区役所に移られたが、今も全体の統括役として、いくつもある区立の博物館の世話をしているらしい。ご多忙とお見受けするが、お元気そうでなによりだ。
いつもは区役所に常駐しているという北見さんだが、この日は岩槻の博物館スタッフが見学に来たとかで、その案内役としてたまたま館に来ていたというのだから、この再会はまさに奇遇というべきものだ。彼も目を丸くしていた。
昨秋九月に開館したこの漱石山房記念館の立ち上げも、北見さんの尽力の賜物だったと推察される。事実、このあと復元された山房の建物を見学すると、熱心で感じのいいヴォランティアが懇切な解説を施していた。
漱石山房記念館の気配りの行き届いた秀逸な展示を愉しみながら、自分とこの館の間に見えない絆を感じていた。しみじみ嬉しさがこみ上げる。