やっとの思いで難行苦行を潜り抜けた。夜空を見上げると雲間から綺麗な満月が姿を覗かせている。窓辺に備えた月見団子を備えて寿ぐ。小生にとって今宵は高齢者認定の前夜でもある。久しぶりに心静かな夜更けに何を聴こうか。
《イギリス音楽の詩情を求めて――
ウォーロック/ディーリアスへのセレナード》
ホルスト:
サマセット狂詩曲
ブルック・グリーン組曲
ヴォーン・ウィリアムズ:
コンチェルト・グロッソ*
ディーリアス:
エアとダンス*
ヴォーン・ウィリアムズ:
アリストファネス組曲《雀蜂》
ウォーロック:
セレナード (フレデリック・ディーリアス六十歳の誕生日に)*
ノーマン・デル・マー指揮
ボーンマス・シンフォニエッタ
ボーンマス交響楽団*1980年4月29~30日、サウザンプトン、ギルドホール
1967年6月20日、プライオリー、クライストチャーチ*
東芝EMI TOCE 6415 (1990)
CD初期の80年代末から90年代初頭にかけて、東芝EMIからシリーズで二十点ほど出た「
イギリス音楽の詩情を求めて」の一枚。あまり話題にもならず、ネット上にはジャケット画像すら見あたらない。
ビーチャム門下のノーマン・デル・マーは地味な上にも地味な指揮者だから、今では思い出す人も稀だろうが、ディーリアス演奏にも一家言ある人だ。
録音時期からも知れるように、本CDはもともと二枚のLPに収められた曲目を一部割愛し、曲順を適宜シャッフルした再編集盤である。
弦楽合奏のみによる三作品(RVWの合奏協奏曲とディーリアスとウォーロック)は "English Music for Strings"(
→アルバム・カヴァー)というアルバムが出自(ほかにエルガーの弦楽セレナードも収録)。学生時代、このLPにさんざん親しんだ小生にはひどく懐かしい。
ホルストの二作品と《雀蜂》組曲とは80年代に出た別アルバムから丸ごとの再録であるらしい(
→アルバム・カヴァー)。こちらのLPはとんと見憶えがない。
漠然と流し聴きしていても、なんとなくまとまりが悪く感じるのは、音源の出自からして当然なのだが、個々の演奏が悪くないだけに残念な気がする。RVWの《雀蜂》とその前後の曲との繋がりの悪さは誰の耳にも明らかだろう。ここはやはり、当初のようにディーリアス→ウォーロックの曲順で聴きたかったな。
ディーリアスの《エアとダンス》は四十四年前にこの演奏で出逢った。ウォーロックの《セレナード》のほうは、その少し前に小編成のボイド・ニール合奏団(古!)のモノーラルLPを見つけて愛聴していたものだから、このデル・マー&ボーンマスの演奏は響きが分厚すぎ、重くもたつく印象があったのだが、久しぶりに聴いてみたら、これはこれで心を打つ解釈なので吃驚。掬すべき秀演ではないか。
例によって少しだけお裾分けを。
→ディーリアス《エアとダンス》 デル・マー指揮→ウォーロック《セレナード》 デル・マー指揮