新著『1974年のサマークリスマス』を上梓されたばかりの柳澤健さんと先週お目にかかった。場所は彼の住む吉祥寺の井の頭公園に隣接した水辺のカフェテラス。よく晴れた昼日中からビールをたて続けに痛飲した。もちろん祝杯である。日が傾くまで延々と四方山話の花が咲いたが、そのなかで最も驚かされたのは、彼が地元の素人コーラスに加わってフォーレのレクイエムを練習中だという話。たまたま知り合った近所の女性から誘われたのだという。
「信じられないほど素晴らしい曲で、何度歌っても感動する」と柳澤さん。それに触発されて、小生も久しぶりにこの曲を聴く。たまたまだが先日、御茶ノ水で見つけておいた珍しいディスクが手元にある。
"Gabriel Fauré: Pavane, Songs, Requiem"
フォーレ:
パヴァーヌ (合唱入り版、詞/ロベール・ド・モンテスキュー)***
八つの歌曲 (管弦楽編曲/ジョン・ラボック)
■ リディア (詞/ルコント・ド・リール)**
■ 蝶と花 (詞/ヴィクトール・ユゴー)*
■ 夢のあとに (詞/ロマン・ビュシーヌ)**
■ 投げ捨てた花 (詞/アルマン・シルヴェストル)*
■ さらば (詞/ジャン・グランムージャン)**
■ 水辺で (詞/ルネ=フランソワ・シュリ=プリュドム)*
■ 朝の歌 (詞/ルイ・ポメー)**
■ 秘密 (詞/アルマン・シルヴェストル)*
レクイエム* ** ***
ソプラノ/イリーナ・ドムニチ*
バリトン/ジョニー・ハーフォード**
合唱/OSJヴォイシズ***
ジョン・ラボック指揮
セント・ジョンズ管弦楽団(OSJ) 2013年4月24日、ロンドン、セント・ジョンズ、スミス・スクエア (実況)
Orchestra of St John's OSJCD01 (2013)
→アルバム・カヴァーロンドンのセント・ジョンズ(St John's)はウェストミンスター大寺院や国会議事堂にほど近い一郭に佇む聖堂だった。「だった」と過去形で記すのは今では教会堂としては機能していないからだ。正式名称を「セント・ジョンズ、スミス・スクエア」といい、矩形の広場「スミス・スクエア」の隣接地にこの一帯の教区教会(parish church)として18世紀前半に建てられた(
→当時の景観)。
ところがこの建物は第二次大戦で独軍の空爆により廃墟と化し、聖堂としての機能を喪失した。跡地を駐車場にする計画もあったが、有志たちの熱心な運動により1969年に往時の姿で再建され(
→外観)、以降は演奏会場として用いられている。音響効果に優れているためレコード録音にも適し、フィリップスやチャンドスは室内オーケストラやバロック音楽の収録を数多く行った(
→セッション風景)。
小生は2008年の訪英時この場所でフィリップ・ヘレヴェッヘ指揮によるバッハのカンタータを聴いた(
→当日の日記)ほか、アマチュア・オーケストラ「サロモン管弦楽団」の定期公演でサン=サーンスの「オルガン付き」交響曲の秀演を愉しんだ(
→当日の日記)。寡聞にして全く知らなかったが、ここは旧聖堂名を冠した1967年創設の
セント・ジョンズ管弦楽団(OSJ)の本拠地でもあり、これまで半世紀近く数々の演奏会を催しているのだという。本CDはそのOSJが栄えある初の自主製作盤として世に問うたアルバムであるらしい。
(まだ聴きかけ)