前稿の好評(?)を受けて、英国切手にまつわる話題をもうひとつ。つい先日のこと、4月21日にエリザベス女王が満九十歳になったのを壽いで、英国郵政当局は記念小型シートと六種からなる記念切手とを発行した。
すでに各方面で評判になっているので、噂を耳にされた方もおられようが、話題の的はもっぱら王家四代(女王、チャールズ王太子、ウィリアム王子、ジョージ王子)の集合写真をあしらった小型シート(
→これ)に集中しているようだ。
なにしろこの写真、かの
アニー・リーボヴィッツが特撮したものだからだ。1975年のローリング・ストーンズのツアー写真を皮切りに、ジョン&ヨーコの有名なポートレート(全裸のジョン・レノンが蟬のように小野洋子に抱きついたショット)、あるいはデミ・ムーアの妊婦ヌード(『ヴァニティ・フェア』誌の表紙を飾った)などで物議を醸した米国の女性写真家リーボヴィッツに、英国王室が記念すべき公式写真を依頼したのだから、ちょっとした驚きを巻き起こしたのである。
もっともリーボヴィッツは近年、すっかり英国王室の御用達カメラマンとして遇されているらしく、誕生日当日には切手とは別に、最新ポートレートも公表されている(
→女王と孫・曾孫たちとの集合写真、
→愛犬たちを連れ散歩する女王)。
ところで小生が話題にしたいのは、この小型シートではなく、同日に発行された六種類の記念切手のほうだ。
女王陛下の九十年の歩みをたった六枚の切手で要約する。これは相当に難度の高い課題だろうが、それを実に巧みなやり方で成し遂げているところに感心した。女王の少女時代から新婚までの家庭生活を物語るにはモノクロ写真、海外訪問や国会での正装姿など公務に携わる場面はカラー写真、と描き分けも鮮やか。
ここで皆さんに一問クイズをお出ししよう。この六枚の記念切手のなかに、とある国家元首と女王陛下とのツーショット写真が含まれている。その国家元首とは果たして誰か? なかなかの難問ですよ。米国大統領? ドイツ首相? 誰を選んでも、選ばれなかった国から苦情が出かねない。もしもあなたが郵政当局の責任者だったら、どこの国の誰と一緒の写真を採用しますか?
正解をご覧いただこう(
→これ)。いかがですか、これなら誰からも文句は出まい。1996年に撮られた写真という。このとき彼は彼女に尊称抜きで「エリザベス!」と呼びかけ、女王も気さくに応じたと伝えられる。