今日は往年の仏蘭西の名ピアニスト、
ロベール・カサドシュの誕生日だったのだという。もしも生きていれば百十七歳。小生がたった一度だけ彼の生演奏を聴いたのは1968年5月だから、そのとき彼はすでに六十九の老境に達していた。小生が高校に入学したての頃のことだ。あれから半世紀近くが過ぎ、小生もカサドシュ翁の年齢に刻一刻と近づいている。歳月不待人。いやはや。
そんなわけで、あれこれと音源を物色していたのだが、
就眠前にカサドシュ&オーマンディのフランク《交響変奏曲》でも聴こうかとYouTubeを探索し、難なく見つけたのだが音質がどうも思わしくなく、ほかにないものかと更にまさぐっていて、なんとも変てこりんな放送音源を発見。カサドシュを独奏者とする《交響変奏曲》、1960年、トリノでの演奏会の実況録音という代物だが、その指揮者が誰あろう、キリル・コンドラシン。ヴァン・クライバーンの凱旋公演に同行してやっと西側でその名が知られ始めた時期、彼はイタリアくんだりで客演していたのだ。
ショスタコーヴィチとマーラーを得意とするコンドラシンのことだから、さぞかし剛毅で激越な伴奏指揮を聴かせるだろうと覚悟して、怖いもの見たさの心境で、おそるおそる聴き始めたら、なんとこれがなかなか秀逸な共演なのである(→これ)。カサドシュとの呼吸もぴたり。フランスの老ピアニストが北イタリアの地方都市でソ連から来た気鋭の指揮者と一期一会の邂逅を果たす。また愉しからずや。
一夜明けての追記)
その小生にとって運命的な一夜となった1968年5月3日の演奏会について、遙かなる記憶を手繰って回想した拙文をリンクしておく。
→こわごわ聴いてみたカサドシュの「皇帝」