昨日の長旅のせいか、全身に疲労が澱のように滞って今日はほとんど在宅のまま怠惰に過ごした。外が冬に逆戻りしたように底冷えしたためもある。
夜になっても体調が戻らず、なかなか読書に集中できない。こんな宵は横になって英国近代音楽でも聴いて心身を労わるに限る。手許に何種類もある弦楽合奏アルバムのうちで選んだのはこれ。
"The Royal Philharmonic Orchestra/ English String Music"
エルガー:
序奏とアレグロ
弦楽セレナード
ディーリアス(エリック・フェンビー編):
二つの水彩画
ウォーロック:
カプリオール組曲
ホルスト:
ブルック・グリーン組曲
ウォルトン:
フォールスタッフの死/柔き唇に触れ、別れなん ~映画《ヘンリー五世》
パーセル(アルバート・コーツ編):
弦楽のための組曲
バリー・ワーズワース指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団1994年8月、ロンドン、C. T. S. スタジオ
Membran RPO 222897-203 (2005)
→アルバム・カヴァー十年ほど前にまとめて数十点どっと出た英京ロイヤル・フィルの廉価盤シリーズの一枚。なにしろ新品が六、七百円という嘘のような低価格なのに、演奏も録音もおしなべて高水準だし、初心者向けには些か贅沢な内容だった。
このアルバムに関しては選曲が凝っていて、入門篇と呼ぶには勿体ないプログラムだ。エルガーの「序奏とアレグロ」「セレナード」、ディーリアスの「水彩画」あたりは常連曲といえようが、アルバート・コーツ編曲のパーセル組曲なんて、太古の昔マルコム・サージェント卿のモノーラル盤で耳にして以来ではなかろうか。
とりたてて特色の際立った演奏ではないものの、自国ならでは音楽の自然な呼吸が羨ましい。エルガーのセレナードなど、悲しいかな、わが楽団ではどうしてもこうはいかない。パーセル組曲の冒頭は劇音楽《アブデラザー》の「ロンドー」、すなわち、かのベンジャミン・ブリテンが用いた「ヘンリー・パーセルの主題」と同じものだ。これは偶然の一致なのか。きっとそうではあるまい。