中平卓馬の訃報に接して咄嗟に《赤い鳥逃げた?》のスチル写真(
→これ)や同サントラ盤のアルバム・カヴァー(
→これ)を思い浮かべた人間は捻くれ者でつくづく写真界と無縁だと思う。それでもこれらのショットが抜群に優れていること位は門外漢にもわかる。凡百のスチルと違い、映画撮影時とは別にわざわざフォト・セッションを設けたらしい。その次に脳裏を掠めたのは安田南、しゃがんで格好よく煙草を吹かす《Some Feeling》のアルバム・カヴァー(
→これ)。
かかるコマーシャル・フォトは行きずりの賃仕事として識者からは軽視されているかもしれないが、ポートレートとしての卓越ぶりは誰の目にも明らかだし、とりわけ被写体の安田南は当時(1970年代前半)中平の熱愛の対象だった。だから単なる頼まれ仕事とは気合いの入り方が違うのだ。
そんな次第で久しぶりに安田南の唄う《赤い鳥逃げた?》主題歌(
→ここ)を聴きながら、この畏怖すべき稀代の写真家の死を悼もう。