夏の盛りは明らかに過ぎたようだが、まだまだ気を抜いてはならない。油断していると熱気にやられてしまう。体調を崩しやすい時期なのである。なので、もう少し続ける「暑さをやり過ごす」音楽シリーズ。いよいよ真打登場と呼ぶべき英国の弦楽合奏用の音楽だ。
"British String Miniatures 1 -- RBS/Sutherland"
ギャレス・ウォルターズ Gareth Walters:
嬉遊曲 (1960)
エドワード・エルガー:
悲歌
マイケル・ロバーツ Michael Roberts:
組曲 (1962~71)
フレデリック・ディーリアス (エリック・フェンビー編):
二枚の水彩画
アンソニー・ヘッジズ Anthony Hedges:
フィドラーズ・グリーン (2001)
ウィリアム・ウォルトン:
二つの小品 ~《ヘンリー五世》
ジョン・アディソン John Addison:
パルティ―タ (1961)
ギャビン・サザーランド指揮
ロイヤル・バレエ・シンフォニア2001年7月5、6日、ロンドン、ソニー・ミュージック・ステューディオズ
ASV White Line CD WHL 2134 (2002)
→アルバム・カヴァー"British String Miniatures 2 -- RBS/Sutherland"
ヘンリー・パーセル (アーサー・ブリス編):
幕間音楽と舞曲集
ピーター・ウォーロック:
フレデリック・ディーリアスの誕生日のためのセレナード
ギャレス・グリン Gareth Glyn:
アングルジー・スケッチズ (2001)
フレデリック・ディーリアス:
エアとダンス
マシュー・カーティス Matthew Curtis:
セレナード (1993/2001)
エドワード・エルガー (パーシー・ヤング編):
組曲《スペインの貴婦人》
フィリップ・レイン Philip Lane:
セレナータ・コンチェルタンテ (1990)
ギャビン・サザーランド指揮
ロイヤル・バレエ・シンフォニア
2001年9月26日、11月16日、2002年2月6、7日、ロンドン、ソニー・ミュージック・ステューディオズ
ASV White Line CD WHL 2136 (2003)
→アルバム・カヴァー"British String Miniatures 3 -- RBS/Sutherland"
ギルバート・ヴィンター Gilbert Vinter:
エンターテインメンツ (1966)
エドワード・エルガー:
溜息
ピーター・ウォーロック (フィリップ・レイン編):
四つの民謡前奏曲 (1917~23)
ジョン・フォックス John Fox:
カントリーサイド組曲 (1975)
ヘイ・マーシャル Haigh Marshall:
悲歌 (1948)
シリル・スコット:
弦楽のための第一組曲 (1931)
ギャレス・ウォルターズ:
シンフォニア・ブレーヴェ (1998)
ギャビン・サザーランド指揮
ロイヤル・バレエ・シンフォニア
2001年9月26日、11月16日、2002年2月6、7日、ロンドン、ソニー・ミュージック・ステューディオズ
ASV White Line CD WHL 2139 (2003)
→アルバム・カヴァー英国近代は弦楽合奏のための音楽の宝庫である。エルガーの「序奏とアレグロ」「弦楽セレナード」やブリテンの「単純交響曲」といった名作から、知られざる珠玉の名品まで、無数の音楽が書かれている。
どうしてそうなったのか、確たる経緯は寡聞にして知らない。弦楽奏者時代のジョン・バルビローリやボイド・ニールが早くから室内合奏団を結成して活動したことが挙げられようが、理由はそれだけなのか。英国人気質と弦楽合奏を結ぶ、何か目に見えない縁(えにし)があるような気がしてならないのだ。
この三集からなるアンソロジー・アルバムは数ある弦楽合奏曲から有名無名こき混ぜて各七曲ずつを選び抜き、英国近代音楽を展望する──否、そんな堅苦しい意図からは抜きにして、長閑で涼しげな楽曲をひたすら愉しもうというシリーズだ。誰もが知るこのジャンルの名作と、初めて聴くような稀少作との混ざり具合、両者のバランスが絶妙である。
ケンブリッジのケム川を上り下りする小舟を写した古写真のアルバム・カヴァーが実に床しい。2003年の夏、ほんの数日間ロンドンに立ち寄った際、チャリング・クロス・ロードの大型書店のCD売場で見つけ、一も二もなくジャケ買いした。その後は久しく目にしないと思ったら版元(ASV)はすでに消滅して稀覯盤の仲間入り。世知辛いご時世とはいえ、なんとも勿体ない話ではないか。