この春から準備を進め、百年前の遺品を調査したり、図書館に通ったり、手許の数十冊の書籍をひっくり返したりの毎日。五月にいよいよ執筆を開始してからも準備不足からあれこれ不明点が続出し、泣きそうな心持で這うように書き進めてきた。四百字詰原稿用紙で(←死語)五十枚の予定がそれではとても終われず、最終的に43,855字、百十枚ほど書いて今ようやく仕上がった。註や附録まで含めると全文字数は56,299字。そんな長ったらしい文章なんて誰が読んでくれると思うの、と家人。まことに御説御尤も。誰ひとり通読なぞしないだろう。だが、それでも執筆しなければならなかった。頼まれ原稿だから? 勿論それもあるのだが、理不尽にも忘却された先人の営みに敬意を表したいという一念こそが原動力、執筆のモチヴェーションだった。過去をいとも簡単に「なかったこと」にする昨今の風潮に一石を投じたかったのかもしれない。とまれこれで小生も人並みに夏休みだ。