小生の住む界隈でロシア人の姿をよく見かける。容貌や風体だけではむろん定かでないが、会話のきれぎれを耳にして「ああロシア人だ」と察しがつく。それもそのはず、昨日から ICCEES Congress 2015, Makuhari, Japan なる大規模な学会が始まっている。
ICCEES とは耳慣れない呼び名だが、正式名「国際中欧・東欧研究協議会 The International Council for Central and East European Studies」の略称だそうだ。ロシアや東欧の政治・経済・社会・文化の研究者が世界各地から数千人(!)参集しているらしい。学会の共通言語はロシア語と英語だというが、やはりロシアからの来訪者が圧倒的に多いのだろう、駅前や路上で汗を拭き拭き、愉しげに屈託なく話す姿から、なんとなくロシア人だろうと想像できる。
会場は海浜幕張駅から十分ほど陸側に歩いたあたりに立地する神田外語大学のキャンパス。小生の散歩コースの域内にあり、その学生食堂を何度も利用させてもらっている馴染深い場所だ。ここで一週間にわたり研究発表が繰り広げら
れる。なかにはロシア音楽やロシア・バレエに関する研究もあると聞き、少しばかり心惹かれたのだが、部外者が参加するには一日一万円(!)の聴講料が要ると知り、とたんに向学心が消え失せた。
せっかくの国際的なイヴェントを指を咥えて傍観するしかないのは地元民として残念だ。せめて二、三千円で聞けたらどんなにいいだろう。
もちろん日本国内からも研究者が集まっている。今日は熊本学園大学の太田丈太郎さんにお会いした。午後たまたま数時間オフだというので、遅い昼食を共にし、そのあとホテルの展望ラウンジで再会を祝して乾杯。太田さんのご専門はアンドレイ・ベールイ。小生などには歯が立たない難解な象徴主義の作家だが、日本では大正時代からさまざまに紹介がなされており、中原中也も彼の名に言及しているときいて吃驚。戦前のロシア文学者は今とは比較にならぬほどの影響力を及ぼしていたのだろう。
太田さんから近著『「ロシア・モダニズム」を生きる』(→これ)をプレゼントされた。せっかくの機会なので、「ぜひロシア語で献辞を」と所望した。快くすらすら書いて下さったが、悲しいかな Синьичи Нумабе しか判読できない・・・。
研究発表は明後日だそうだ。成功をお祈りする。