ふう、火急と相成った原稿執筆が思うように進まぬ。牛歩さながら進捗はするものの、途中あれこれ不明点が出てきて、その都度あたふた諸書を参照し、ネット検索し、果ては追加資料を買い込んだり。終わりは見えているつもりだが、それがいつになるかはまだ覚束ない。月末の締切が果たして守れるかどうか。
流石にもう目が霞んできた。今日はもうやめ。ネット経由でBBCラヂオを聴く。実は先週末からロンドンの夏の風物詩 Proms が始まっている。今年のラインナップはいつになく地味で、これはという目覚ましい演目を欠くのだが、そこはそれ、倫敦の老舗「プロムズ」はそんじょそこらのサマー・コンサートとは格が違う。例えば昨晩(7月22日)あったばかりの Prom07 はこんなふうだ。
プロム07
2015年7月22日(水)午後7時~
ロイヤル・アルバート・ホール
ディーリアス: 夏の庭園にて
ヒュー・ウッド: エピサレイミオン Epithalamion (BBC委嘱作/世界初演)*
~休憩~
ニルセン: クラリネット協奏曲**
ラヴェル: 《ダフニスとクロエ》第二組曲***
アンドルー・デイヴィス卿 指揮
BBC交響楽団
BBC交響合唱団* ***
クラリネット/マーク・シンプソン**いやはやディーリアスで始まるコンサートとは羨ましい限りだ。いつの間にかアンドルー・デイヴィスは大家となり、滋味豊かなディーリアスを紡ぎだすようになった。川面から涼風がそよいでくるような清々しい演奏(
→ここで聴ける)。
続くヒュー・ウッド Hugh Wood (1932- ) の楽曲はゲンダイオンガクの世界初演というので身構えていたら、そこは英国らしく、拍子抜けするほどに平明なカンタータ。ただし歌詞はまるきり判らぬ。ジョン・ダンが英王女の婚礼を寿いだ詩だというから、まあ判らなくて当然だ。
ここで休憩を挟んでニルセンのクラリネット協奏曲。今年は作曲家の生誕百五十周年なので選ばれた曲だろう。ただし昔からニルセンはシベリウスの次に苦手。この協奏曲もどことなく摑まえどころがない。
そして最後はラヴェルの《ダフニスとクロエ》。第二組曲なのに合唱付きというのがなかなか贅沢。英国指揮者と英国楽団だからなのか、どことなくよそ行きの気配がして、官能性も不足。これはちょっといただけないラヴェルだ。
とまあつい悪口を書いてしまったが、プログラム自体はなかなかに魅力的。英京にいたらきっと足を運んだことだろう。