長い原稿を書かねばならぬ。昨日も図書館で眦を決して下調べ。百年前の資料と悪戦苦闘して疲労困憊した。これでもう必要な素材は出揃ったので、あとは調査結果をもとに書き始めればいいだけの話なのだが、そうはなかなか問屋が卸さない。冒頭の出だしを考えあぐねて輾転反側している。
こういうときに限って、面白そうな本が続々と届くので困ってしまう。ざっと目を通すだけでも幻惑され、執筆から気が逸れてしまいそうになる。期末試験の直前に傍らの小説を読み耽ってしまう、という如何にもありがちな悪癖の再発だ。
Lettres à Reynaldo Hahn
Marcel Proust
Gallimard
1956 (renouvelé en 1984) →表紙デザイン
マルセル・プルーストの仏文にはとても太刀打ちできないが、それでも欲しくなった一冊。親密な友人(というか恋人)だった作曲家レナルド・アーンに宛てた手紙(恋文?)を二百通近く集めた書簡集である。最初の手紙では Cher Monsieur だった呼び名が Mon cher petit Reynaldo を経て Mon petit Bunibuls や Cher Gueninuls といった親しげな愛称に変化し、随所にプルースト直筆のヘタウマなペン書きイラストが入るのが実に愉快。たた眺めているだけで眼福である。
Sacha Guitry: La Collection André Bernard
Ader Nordmann
2011 →表紙デザイン
標題にあるアンドレ・ベルナールは1934年生まれの仏人で、ギター奏者マニタス・デ・プラタのマネージャーを経て、TV番組の制作を長く手がけた。その傍らサッシャ・ギトリに私淑・傾倒し、彼に関する膨大なコレクションを蒐集した。そのベルナールが所蔵するギトリ関連資料の一切合財を手放し、パリのドルーオで競売にかけた。当該オークション目録が本書なのだが、いやはやその膨大さといったら! 総数八百二十点、その半数近くが美麗なカラー図版で愉しめる。ギトリ愛好者が我が国にどれ位いるか知らないが、そんな奇特な御仁に声を大にしてお薦めしたい大冊だ。監督作品《とらんぷ譚》の一場面をあしらった表紙も渋いなあ。
A Russian Diary 2010
Julian Rothenstein (ed.)
Redstone Press
2009 →表紙デザイン倫敦の赤石出版が1989年版から毎年ずっと出している美麗な日記帖。その2010年版がロシア絵本を題材にしていると気づいたときはもう品切で地団駄を踏んだ。それが中古品のマーケットプレイスで嘘みたいな安価で売りに出たので、すかさず手に入れた。ご覧のようにリング綴じの実用日記だが、随所に1920~30年代のロシア絵本の挿絵があれこれ挿入され、頁を捲って飽きることがない。やっと入手できてホッと安堵したところ。何しろ「わが国のロシア絵本研究の第一人者」(!)と呼ばれたこともある小生だから、架蔵しないわけにいかないのだ。
Red
John Logan
Oberon Modern Plays
Oberon Books
2012 (Kindle editon) →表紙デザインタンスマンとギター
現代ギター 臨時増刊
現代ギター社
1999 →表紙デザイン
(まだ書きかけ)