プロコフィエフの苦境のことはひとまず脇に除けて花見に出かけた。いや、まだ桜はほんの数輪が咲き始めたにすぎないが、朝起きたら青空が素敵に春めいていて、こういう日には外出せずにはいられなかった。
先日は新宿御苑だったので、今日は家人と連れだって浜離宮恩賜公園に繰り出すことにした。JRと地下鉄と「ゆりかもめ」を乗り継ぐ。空気が澄んで春霞は棚引かず、途中で何度も富士山が遠望できたのは眼福。汐留で下車するが、ここから浜離宮の入口までの道は入り組んでおり、工事中の箇所もあって歩きづらいのが難だ。
ろくに調べずに赴いたのだが、正門から入るといきなり満開の菜の花畑に遭遇する。見渡す限り、というほどではないが、それでも視界が真黄色に染まってクラクラする。「いちめんのなのはな」という詩句がふと口をついて出る。
浜離宮にはもう何度目かなので、勝手知ったる者の気分で慌てず騒がず、見どころの「三百年の松」「潮入の池」「鴨場」「船着場」をゆるりと一巡。途中で喉の渇きを覚えたので、木製の「お伝い橋」を渡って池の「中の島」へ。そこの茶店で抹茶と茶菓を所望する。いつもに較べて店が格段に空いているのは少しだけ季節外れだからだろう。それにしても素晴しい眺望だ。空には雲ひとつ見えない。
梅は疾うに終わり、桜はまだだが、それでも菜の花をはじめ、白木蓮、辛夷(こぶし)、山茱萸(さんしゅゆ)、連翹(れんぎょう)、蒲公英、烏野豌豆が競うように咲いて、春の到来を誇りかに告げている。青空を背に花の白や黄が目に眩しい。
一時間半ほど園内を歩くとさすがに空腹を覚えた。ここから道なりに芝離宮へ赴く話も出たが、それよりも昼食を優先させようと、新橋駅方面へ歩を進める。
前にも歩いたのと同じ道筋で新橋駅前ビル1号館へ。もうあらかたランチタイムは終わっていたが、ひっそり営業していた蕎麦屋「本陣房」の暖簾を潜った。家人が註文した天麩羅蕎麦も旨そうだが、小生の二色せいろ(柚子切と田舎蕎麦)もなかなか結構。ここは隠れた名店かもしれない。そのあとはお約束どおり、同じビル内の洋菓子の老舗「巴裡小川軒」で名物レイズン・ウィッチを土産に買う。
再び元気が出たので、そこから新橋の山側へ抜けて、駅前の飲食街を探索。裏道を通って内幸町へと歩を進め、日比谷公園までゆっくり歩いた。風が少し強かったものの、陽射しは暖かく恰好の散歩日和。ここでも桜の開花を見届けた。園内にある「日比谷グリーンサロン」のカフェでセルフサーヴィスの珈琲を吞んで一息つく。来週あたりはこの界隈も花見客で賑わうことだろう。