このブログで何度となく登場するカレー店「
香菜軒」に旧友たちが興味を抱き、そんなに旨い店ならば一度は体験したいと以前から要望があった。今年限りで閉店だと伝えたら「是非に」と望まれた。そんな次第で、つい先日の忘年会で再会したばかりの
Boeと
あきらと示し合わせて出向いてみた。昨日の昼のことだ。
待ち合わせは西武池袋線の富士見台駅改札。少し早く着いた
あきらは界隈のあまりの変わりように目を丸くしていた。高架線になって以来、駅前の様子は激変してしまったからだ。三十年ほど前、まだ拙宅がこの近くにあった時分、彼は何度も遊びにきたから、昔の富士見台に懐かしさを憶えている。それは小生とて同じことだ。ほどなくBoeも到着、三人連れだって至近の距離にある「香菜軒」へ。開店時刻の正午を少し回った頃合なのに、もう先客がいる。今年いっぱいの閉店と決まってから、この店には千客万来なのだという。実は今日も事前に電話してカウンター席を三つ予約しておいたのである。
まずは黒板のメニューから前菜をいくつかと、赤葡萄酒をデカンタで所望。むさ苦しい初老の男三人とはいかにも冴えないが、とりあえず乾杯。初めて来訪した両君は店の狭さにちょっと驚いたかもしれないが、料理の美味しさにはどうやら同感して貰えたようだ。旨い肴に酒杯も進む。
ランチタイムとて、常連とおぼしき来客が三々五々あって、カウンター内の三浦夫妻は忙しそう。タイミングを見計らって、メインのカレー(ランチのセットメニュー)へと進む。この日のメニューにある四種──すなわち、
レンズ豆のカレー、
チキンのキーマとひよこ豆のカレー、
鰹のスモークとキャベツのカレー、
天然海老とキノコのカレー──すべてを所望したのだが、どれもこれも実に旨い。これらの料理がもう二度と食べられないのかと思うと悲しくなる。ランチセットなので、各人にデザートとチャイが附く。いつもながら美味しくて心が和む。
気が付くともう二時過ぎ。ついつい図々しく長居してしまった。見納めに店の内部をしげしげと眺め、店主夫妻に挨拶して辞去。
三人ともかなり満腹気味なので、腹ごなしに隣の中村橋駅界隈まで散策。小生はここで買物があるので、附き合わせてしまったのである。目的地は住宅地のど真ん中にある「
糀屋三郎右衛門」。東京都内で唯一ここだけという味噌蔵である。
場所はうろ覚えだったのだが、しばらく行くと「昔みそ」の看板が見つかった。いかにも古めかしい長屋風の建物で今も味噌を醸造しており、製品を買うこともできる。ここで家人から頼まれていた「
京の里」(赤色味噌)と「
すずしろの里」(淡色味噌)の二種を所望。どちらもたいそう旨く、これで作る味噌汁は絶品なのだ。
ずしり持ち重りする荷物を抱えて、中村橋駅前まで戻るとさすがに冷気が身に染みた。暖をとろうと駅前の珈琲屋「Chat Noire」で一服したのち、西武池袋線で池袋まで戻り、そこで
しゅんを白山の仕事場に訪ねるという両君と別れた。次に会うのは来春だろうか。