つい先日たまたま新宿の中古店で手にした雑多な新旧プロコフィエフCDをかけて秋の夜長を過ごす。
"Prokofiev: Violin Sonatas, Five Melodies / Ibragimova & Osborne"
プロコフィエフ:
ヴァイオリン・ソナタ 第一番
五つの旋律
ヴァイオリン・ソナタ 第二番
ヴァイオリン/アリーナ・イブラギーモワ
ピアノ/スティーヴン・オズボーン2013年7月11~13日、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール
Hyperion CDA 67514 (2014)
→アルバム・カヴァーロシア期待の新星としてもて囃されるイブラギーモワの最新録音。小生は初めて聴く。期待と懸念が半々だったが、結果はどうやら凶と出た。確かに達者な腕前だが、解釈はいかにも表面的で上滑り。とりわけ第一ソナタには失望した。深い瞑想の淵へと導くどころか、まずは音にしましたという段階。「こんな浅い音楽ぢゃないぞ」という慨嘆を禁じ得ない。この曲を録音するのは十年早いのではないか。
《プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ 第一番、第二番 他》
プロコフィエフ:
ヴァイオリン・ソナタ 第一番*
ヴァイオリン・ソナタ 第二番**
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
ヴァイオリン/久保田巧
ピアノ/ワジム・サハロフ* **2002年12月2~4日、山梨、韮崎市文化ホール("Breeze" 大ホール)
オクタヴィア Exton OVCL 00099 (2003)
→アルバム・カヴァーどうしても前盤と聴き比べてしまうが、この久保田盤のほうが遙かにプロコフィエフの神髄に迫っているとみた。第一ソナタが名演。沈潜の果てに寂寞たる調べに誘う第一楽章、錯雑たる音楽を巧みに統御した終楽章、共に素晴らしい出来だ。日本人では藤川真弓の録音以来の快挙ではないか。第二ソナタの悲哀を湛えた解釈、一気呵成に弾ききった無伴奏ソナタも申し分ない。サハロフのピアノも秀逸。
"Prokofiev: Symphony No.4; Lieutenant Kijé -- MSO/DePreist"
プロコフィエフ:
交響曲 第四番(改訂版)*
組曲「キジェー中尉」**
ジェイムズ・デプリースト指揮
マルメ交響楽団1991年9月5、6日*、10月18、19日**、マルメ楽堂
BIS CD 531 (1992)
→アルバム・カヴァー米国人がスウェーデン楽団を率いたプロコフィエフというと一向に食指が伸びまいが、指揮者がデプリーストとなれば話が違う。小生は生演奏を聴く機会を逸してしまったが、彼は実は優れたプロコフィエフ解釈者であり、小生は以前「ドニエプル河畔で」と「シンデレラ」抜粋のCDで舌を巻いた。晦渋な第四交響曲(改訂版)もデプリーストの手にかかると明快な秀作に変貌。「キジェー」は云うに及ばずだ。
"Sergei Prokofiev: Ivan The Terrible"
プロコフィエフ(スタセーヴィチ編):
オラトリオ《イワン雷帝》
アルト/タマーラ・シニャフスカヤ
バリトン/ヴォルフガング・ブレンデル
語り/セルゲイ・ユルスキー
ドミトリー・キタエンコ指揮
フランクフルト放送交響楽団
デンマーク国立放送合唱団
フランクフルト児童合唱団1993年6月11、12日、フランクフルト、アルテ・オーパー(実況)
RCA Victor 61954 2 (1995)
→アルバム・カヴァー映画のサウンドトラックで指揮を務めたアブラム・スタセーヴィチがプロコフィエフ歿後の1961年、作曲者の七十歳の誕生日を祝ってカンタータ化した演奏会用ヴァージョンでの演奏。ナレーションがオリジナルどおり露語なのは貴重だが、そのぶん難解。リーフレットの対訳と首っ引で愉しんだ。実況録音とあって演奏は生気に満ち、独唱者に名アルトのシニャフスカヤを迎えるなど陣容にも不足はない。