昨日はいろいろあって上京、ちょうど昼食時なので西武池袋線の富士見台駅で降車、馴染のカレー屋「
香菜軒」でランチを摂ることにする。先月の誕生日(10月5日)にも訪れているのだが、この店は今年いっぱいで閉じてしまうので、できるだけ足繁く通おうと思っていたのだ。
すでに数人の先客がいたが、幸いいつものカウンター席が空いていたのでそこに着座。まずは自家製の柚子酒を頼み、前菜メニューからは、きのこのキッシュ、大根のポタージュ(温製)、そして手製の豚レバーペーストを所望する。いずれもこの店ならではの御馳走だ。うゝむ、どれもこれも旨い。あと何度これらを口にできるのかと思うと愛おしさがいや増す。「(開店日は)
とうとう残りあと三十日を切ってしまいました」と店主の三浦さん。ちょっと涙が出そうになる。断続的とはいえ、二十年間ずっと通ってきた店だもの、悲しくなるのは当然だ。
ちょうど昼時とあって、閉店間近ということも手伝ってか、とっかえひっかえ常連客があり、厨房の三浦夫妻は見るからに忙しそう。愚図愚図と長居するのは禁物なので、主菜のカレーを二品──天然海老とエリンギのカレー、チキンのキーマとひよこ豆のカレーを註文。どちらも香菜軒の「顔」といっても過言でない逸品だ。しみじみ噛みしめるように味わう。
「
ぎりぎり大晦日まで営業します」とのことなので、最終日にもきっと必ず顔を出すことを三浦夫妻に約して辞去。
そのあと西武線で二駅戻った練馬で下車、駅構内で練馬区の物産販売所を探すが見つからない。どうやら閉店になってしまったらしい。ここで美味しい味噌が買うつもりだったのに残念だ。アテが外れたまま都営地下鉄で新宿まで出て、紀伊國屋書店であれこれ物色するが、探している本に遭遇できず空振り。どうもツイてない日だ。詮方なく隣のビルの八階にある中古レコード屋で時間を潰す。
一時間ほどかけてCDの棚を丹念に漁るが、ここでも目ぼしい掘出物はなく、数枚の新旧プロコフィエフを手にしたのみ。ふと出来心からLPの棚もついでに覗いたら、マニュエル・ロザンタールの珍しいオペレッタ『黒い雌鶏 La Poule noire』全曲(仏Columbia)やら、ピエール・ベルナック朗読による『仔象ババール』(BBC収録)やら、オネゲルのオラトリオ『火刑台のジャンヌ』の最初の録音(1970年代の再発盤)やら、滅多に見かけない稀少盤がいろいろ。しかも嘘みたいに安価だ。近頃LPが値崩れしているという噂はどうやら本当らしい。
思いがけぬ収穫(?)を手に都営地下鉄の新宿線に。どうも上の空だったらしく、うっかり乗換駅を勘違いして九段下で降りてしまう。駅員に詫びて再入場、次の神保町で(今度は間違わず)都営三田線に乗り換え春日で下車。ロスタイムのせいで珈琲屋に寄る時間はなくなり、そのまま駅に直結した文京シビックセンター三階へ。今夕ここの会議室で「
エイゼンシュテイン・シネクラブ」例会がある。演題は《イワン雷帝》だという。通知があったのは前日だが、これは聴き逃せない。
(まだ書きかけ)