寢坊して起き拔けにヴェランダで一服してゐたら、前の道路を藪から棒に倫敦の二階建バスが通り過ぎたものだから心底驚愕した。思はず我が目を疑ひ、未だ夢から醒めてゐないのかと訝しがつた。
赤い車體の乘合自動車は現今のワンマンバスではなく、今は廢止された古式床しいルートマスター(Routemaster
→此の車種)なので二度吃驚。正面の行先表示窓に "BLOOMSBURY" とあり、路線番號は「38」、小さい字で
ハックニー、
ダルストン、
イズリントン、
ローズベリー通、
ブルームズベリー、
ピカデリー、
ハイドパーク・コーナーと、主な停留處名まで御丁寧に表示されてゐる。此のバス路線は北倫敦の住宅街からゆるゆる南下して都心の繁華街へと至るルートで、何度か實際に乘車する機會もあつた。それにしても其の路線バスが選りに選つて、何故に千葉の灣岸くんだりを走行してゐるのだ?
ちやうど散步から歸宅した家人に尋ねてみたら、たちどころに疑念は氷解した。なんでも今日は地元の子供達の爲に近所の公園でハロウ
ヰーン祭が催されるとかで、アトラクション用にレンタルの倫敦バス(近頃さういふサーヴ
ヰスがある由)を借り、彼等を乘せて界隈を走らせるのだといふ。さつきのはその試運轉だつたらしい。いやはや驚いたのなんの。お蔭樣ですつかり眠氣はふつ飛んだ。