ふう、すつかり滿腹である。秋も深まつたので、何か體がじんわり溫まるやうな料理、煮込か鍋物の類が無性に食べたくなり、ふと思ひ立つて獨逸料理の代表格
アイスバインに挑戰する事と相成つた。
そもアイスバインとは何ぞや。ウィキペディアから冒頭の定義を引いてみる。
アイスバイン
豚肉(鹽漬の豚脛肉)を、玉葱、セロリなどの馨味野菜やクローブなどの馨辛料と共に數時間煮込んで作る。ザワークラウトやジャガイモと一緒に供される事が多く、マスタードを附けて食するのが一般的。
Eisbein といふ名は羅典語 os ischbeen (坐骨)に由來する。獨逸語の Bein は脚の意。なお Eis は「氷」を意味するが、此の料理では氷は關係ない(使用する岩鹽が氷のやうだからとする説もある)。かやうに本式では生の豚脛肉を鹽漬にした上で、長時間かけてグツグツ煮込まねばならないのだが、たまたま先般スーパーマーケットで豫め加工濟のアイスバインを買つておいた。鹽茹でした骨付脛肉を丸ごと冷凍したもので、塊のまゝ眞空パックに密封してある。此れを用ゐると調理は實に單簡なのだ。
先づありあはせの人參と馬鈴薯を亂切りにし、鍋に沸かした湯に投入。月桂樹の葉とコンソメスープの素を加へ、强火で十五分程グツグツ煮立てる。そこへ解凍したアイスバインを塊のまゝ放り込み、溫まつた頃合に肉塊にナイフを刺し入れて、削ぎ落とすやうに肉を骨から剥す(肉を外した不要な骨は取り除ける)。
最後にザク切りにした玉葱を投入し、全部の具材がほつこり柔らかく馴染んだら完成。此處まで調理には一時間もかゝつてゐない。既に厨房一帶には美味さうな芳ばしい匂ひが充滿してゐる。
出來上がりは上乘だつた。鹽漬肉の旨味がスープに沁み出て、具材の野菜と得も云はれぬハーモニーを釀す。うつかりマスタードを切らしてをり、ザワークラウトも用意できなかつたが、なに、單品でも存分に堪能できる。冷えたヱビス麥酒との相性も頗る宜しかつた。とても一度に食べきれる分量ではないので、殘つた半分は明日も賞味する事にした。たまにはいゝですよ、獨逸料理のアイスバイン。