久々に依賴原稿を執筆した。極く短い文章なのだが暫くぶりなので書き方の勘が容易に戾らず、ひよつとして仕上げられないのではと嫌な豫感が胸を横切つた。何の苦も無しに日々ブログを綴つてはゐても、好き放題に書くのと註文に應じて責務を果たすのとでは丸きり勝手が違ふ。今囘の主題は「美術と旅」と云ひ、何か一點の作品を採り上げて「旅」との關はりを考察するといふもの。美術に就て文を草するのが斯くも氣が重いのは何故なのだらう。トラウマの一種なのだらうか。
さういふ譯で午后ずつと作文に追はれて呻吟した。やつとこさ脱稿したので心安んじて夕餉に臨む。先日の東北旅行で買ひ求めた食材はあらかた平らげてしまつたが、僅かに殘つた「いぶりがつこ」をアテに白葡萄酒をちびちび飮む。旨いのなんの。「いぶりがつこ」とは「燻した漬物」の意ださうで、燻製にした大根の澤庵漬の謂ひである。コリコリ齒應へがあつて、燻された獨特の風味が何とも芳しい。夕食の度每に愉しんで少しずつ齧つてゐたら、今夕たうとう食べ盡してしまつた。